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(写真:PIXTA)

 消費税率の10%への引き上げまで1カ月を切った。飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率が初めて導入され、キャッシュレス決済時のポイント還元も始まる。

 いずれも増税前後の需要の乱高下を抑制するのが狙いだが、キャッシュレス決済時のポイント還元には、中小事業者支援の側面もある。決済額の一部を政府の補助金で還元する仕組みで、フランチャイズチェーンで2%、一般の中小事業者で5%の還元となる。

 ただ、対象となる中小事業者の反応はいま一つ。参加を申請したのは200万店といわれる対象の約4分の1にとどまる。

 「入れたからといって客が増えるわけでもないのに、キャッシュレス対応なんてするわけがない。手数料負担が増えるだけ」。大阪メトロ谷町線・谷町六丁目駅の近くで定食屋を営む40代の女性はこう話す。

 かいわいは大阪市の中心部にありながら、木造家屋や昔ながらの商店街が残り、若者を中心に人気が高まっているエリア。飲食店の開業も相次いでいるが、「どこも対応しないでしょう。レジだって入れていないところが多いんだから」。

 東京の下町でも事情は変わらない。東京都北区の十条銀座商店街の事務局によると、商店街のうち4割程度を占めるチェーン店ではキャッシュレス対応が全面的に進んでいるものの、自営業者の間では浸透していないという。

 商店街の担当者は「制度が複雑で十分に理解が進んでいないし、そもそもお客さんの大半が高齢者でニーズがない」と指摘する。「商店街で見ていると、現金でのやりとりがほとんど。この光景が10月にガラッと変わるとはとても思えない」と話す。

 キャッシュレス対応に前向きな事業者からも不満の声が上がる。ポイント還元が来年6月まで9カ月間の期間限定だからだ。前橋商工会議所(群馬県)の幹部は「期間が短すぎるといった不満はよく聞く。来年6月に国の補助金が終了すれば、現金決済に戻るケースも多いのではないか」と語る。

 ある国会議員の元には、「消費が盛り上がりそうな東京五輪の前に終了してしまい中途半端」「行政の説明会に出かけたが、説明している当人が理解できていない様子だった」「使い勝手のよいソフトウェアがない」といった声が寄せられているという。

 景気の下支えや中小事業者支援、脱現金社会など、政府の様々な期待が込められたポイント還元だが、軽減税率の導入だけで手いっぱいというのが現場の本音。混乱に拍車がかかり、仮に軽減税率の速やかなスタートを妨げるような事態になれば、まさに本末転倒だろう。

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