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(写真:Abaca/アフロ)
 

 9月5日午前、横浜市神奈川区の踏切で京急電鉄の快特電車とトラックが衝突する事故が発生した。電車は3両目までが脱線。トラックの運転をしていた男性が死亡し、電車の乗員乗客30人以上が重軽傷を負う惨事となった。

 現場近くに住む男性は「電車が壁にぶつかるようなドーンという音と爆発音が混じりあった大きな音がした」と事故当時を振り返る。先頭車両は約45度傾いた状態で停車し、フロントガラスが割れていることなどから、壮絶な事故の様子がうかがえた。

 

 現在、神奈川県警などによる事故原因の究明が行われているが、カギとなりそうなのが、トラックが踏切内に進入し立ち往生した経緯に加え、電車がどの時点でブレーキをかけたかだ。

 京急電鉄によると、事故が起きた踏切には障害物を検知すると、踏切から10m、130m、340m地点の信号が点滅し、運転士に異常を伝える仕組みになっている。踏切から340m地点にある信号は踏切から600m離れた地点からも目視することができ、区間の最高速度である時速120kmで走行していたとしても踏切に到達するまでに停車できるようになっているという。

 京急電鉄の幹部は「120kmを超えると自動で速度を抑えるシステムが作動するので、それ以上のスピードが出ていたとは考えられない」と説明。運転士がブレーキをかけたタイミングについては「現在調査中で答えられない」と話す。

 ただ首都圏の大手私鉄関係者からは「あくまで人が操作することなので、ブレーキの作動が遅れる可能性は否定できない」との指摘もある。そうした中で、各鉄道会社で広がっているのが、電車の接近時に踏切内に車などの進入を検知した際、電車のブレーキが自動でかかるようにするシステムの導入だ。

 日経ビジネスが東京都内に路線を持つJR東日本と主な私鉄の計8社に取材したところ、うち6社が踏切での異常時に電車を自動停止するシステムを導入していた。

 JR東は京浜東北線や山手線で、自動列車制御装置(ATC)と連動させ、自動で減速する仕組みを導入。小田急電鉄では2015年から136カ所の踏切で、自動列車停止装置(ATS)によって停車できるようにした。西武鉄道でも「見通しの悪さなどを考慮して」、池袋線と新宿線の踏切2カ所ずつでATSとの連携を行っているという。

 対して、京急電鉄や京成電鉄では同様の仕組みは導入されていなかった。京成電鉄では駅での異常時に自動でブレーキをかけるシステムの整備は現在進めているという。原因究明はこれからだが、導入されていれば事故は防げた可能性がないとは言い切れない。

 一番の防止策は電車接近時に踏切内に進入しない横断者側の意識だ。だが、踏切がある以上、接近時の進入を防ぎきることは容易ではない。一方で、高架化など道路との切り離しといった対策は時間も費用もかかり簡単ではない。踏切内の異常感知時の自動ブレーキも「電車到達直前での検知ではブレーキは間に合わない」(システムを導入している私鉄の広報担当者)というように対応には限界もあるが、安全性を業界全体でさらに高めていく必要性を今回の事故は投げかけている。

首都圏の鉄道各社の踏切内での異常検知時の自動ブレーキ導入状況
京浜急行電鉄 なし 異常を知らせる信号を確認した運転士が停止
東日本旅客鉄道 あり 京浜東北線や山手線で導入
東武鉄道 あり 運行本数が多い路線を中心に導入
西武鉄道 あり 池袋線、新宿線の4カ所で導入
京成電鉄 なし 異常を知らせる信号を確認した運転士が停止
京王電鉄 あり 87カ所の踏切で導入
小田急電鉄 あり 136カ所の踏切で導入
東京急行電鉄 あり 検知時は15km/hまで減速
   
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