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 8月末に横浜市で開かれた第7回アフリカ開発会議(TICAD)。安倍晋三首相は、今後3年間で200億ドル(約2兆1000億円)を上回る民間投資の実現を後押しする考えを示した。

 アフリカ最大の人口を誇るナイジェリアの実業家で、「『アフリカの孫正義』のような存在」(JETRO)というトニー・エルメル財団(TEF)創設者のトニー・エルメル氏はアフリカの著名な投資家、篤志家の一人。アフリカ20カ国で事業を展開するユナイテッド・バンク・フォー・アフリカ(UBA)会長のほか、ナイジェリア最大の財閥、トランスコープ(Transcorp Plc)の会長も務める。2010年にはトニー・エルメル財団を設立し、アフリカの起業家への支援を続けてきた。

 TICADに合わせて来日したエルメル氏に、アフリカにおける日本企業にとってのチャンスなどについて聞く機会があった。

トニー・エルメル氏

年1000人支援、潜在的なパートナーに

 TEFは、毎年1000万ドル(約10億6000万円)を若い起業家の支援に活用しているという。エルメル氏は「彼らがビジネスを大きくし、雇用を増やしてアフリカ大陸の繁栄につながるようにするためだ」とその目的を話す。年1000人の起業家を支援しており、「彼らは日本企業にとって、潜在的なパートナーになりうるだろう」と期待を示した。

 同財団は起業家に対し、返済不要の5000ドル(約53万円)を渡してアイデアのコンセプトの検証に使ってもらうプログラムを2015年に開始した。扱う分野は竹製の自転車製造からドローンを使った建設物の監視など幅広い。資金だけでなく、起業家に対するメンタリング(指導・助言)やネットワーキングなどを含めて支援している。

 ナイジェリアではTEF以外にも、スタートアップ企業を支援する組織ができている。TICADでJETROとともにスタートアップのピッチ(投資家に売り込む事業案発表会)を開催したアクセラレーターのコークリエーションハブのほか、2018年には起業家支援組織のエンデバーがナイジェリアに進出した。欧米やアジアなど世界のほかの地域に比べると圧倒的に投資額は小さいが、社会課題が大きいがゆえにスタートアップへの期待も大きい。

 エルメル氏はこうしたスタートアップとの協業が日本企業のチャンスだとしたうえで「技術的な専門性と、市場への窓口」の役割を期待していると述べた。彼らの製品を日本で売るほか、アフリカの企業が巨大なアフリカ市場に日本企業がコンタクトする窓口になりうるとみている。

 アフリカでは中国の存在感が高まっている。エルメル氏は「中国企業は中国政府の支援を受けているのが大きい。中国の政権幹部はほぼ毎年アフリカを訪問している。日本の首相ももっとアフリカに興味を持つべきだ」とも指摘。今回のTICADでは安倍晋三首相が今後3年間で200億ドル以上の投資を後押しすると述べたが、「表明するだけでなく、実際に投資を実行することが重要だ」と話した。

 「アフリカにとって重要なセクターを投資先として重点的に選ぶべきだ。道路や空港、電力などのインフラがキーになる」とエルメル氏は言う。日本企業には、若い起業家支援のほか、アフリカの豊富な資源を精製するプロセスなどのセクターへの投資に期待しているという。アフリカの著名投資家の期待に、日本企業はどのように応えるのだろうか。

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