英議会での答弁に臨んだジョンソン首相(写真:Parliament TV/ロイター/アフロ)

 英議会下院が9月4日、合意がないまま10月末に欧州連合(EU)から離脱するのを阻止する法案を可決した。採決の結果は賛成327、反対299。ボリス・ジョンソン首相はEUと合意できない場合、「合意なき離脱も辞さない」と主張してきた。これに対する議会の反対を抑えるべく解散・総選挙を図ったが、下院はこの案も否決した。

 八方ふさがりとなったジョンソン首相に打開策はあるのか。

カギ握る英議会上院

 大和総研の山崎加津子・経済調査部主席研究員は、英議会上院の動向が最初のカギを握ると見る。「離脱を望む勢力から100ほどの修正案が出ている」からだ。下院が可決した案を成立させるためには、上院が修正した案を、下院が再び審議する必要があるという。

 英議会は早ければ、週明け9月9日・月曜日にも閉会となる。法案の審議が時間切れで幕を閉じる可能性がある。多数の修正案の提出は法案潰しの意図があるとみられる。合意なき離脱を阻止するこの法案が成立しなければ、「ジョンソン首相の思うつぼ」(山崎氏)。ジョンソン氏が従来の主張を貫くことができるようになる。

ジョンソン首相なら“居直り”も

 一方、この法案が成立した場合はどうなるか。

 慶応義塾大学の庄司克宏教授は「ジョンソン首相に残された道は大きく2つ。1つは、EUと合意できる案を作り、議会を通す。もう一つは居直ることだ」と見る。

 第1の案について、ジョンソン首相は8月21日、アンゲラ・メルケル独首相と会談した際に「バックストップ条項」*の代替案を30日後に提出することで合意した。ここに、EUと合意する道がまだ残されている。
*:テリーザ・メイ前英首相がEUと合意した離脱案にある、英国の北アイルランドとアイルランドの間の国境問題に関する条項。この条項に対して、英国の強硬離脱派が反発している

 ただし、ジョンソン首相とEUが仮に合意できても、英国内で保守党の強硬派が反対する公算が大きい。これについて庄司教授は「ジョンソン首相は本意ではないかもしれないが、保守党内の残留派や労働党の一部が賛成することで、議会の同意を得られる可能性がある」と指摘する。保守党内の離脱最強硬派は20~30人。これと、合意なき離脱に反対する勢力のどちらが多数となるかが、議会の動向を分ける。

 庄司教授が言う「居直り」は、議会が決めた2020年1月31日までの離脱延期をジョンソン首相が受け入れること。同首相は「議会が決めたのだから仕方ない」と居直り、EUも「英国の世論の支持があるなら……」として延期を受け入れる。「ジョンソン首相は変わり身が早い。10月末の離脱を強く主張しているが、彼なら、これを翻して居直ることがあり得る」(庄司教授)

続きを読む 2/2 そして、総選挙の可能性

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