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 日産は4日、小型SUV(多目的スポーツ車)「ジューク」の新モデルを英国の主力工場で生産すると発表した。11月にも欧州での販売を始める。英国の欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」が現実化すると、EUへの完成車の「輸出」には新たに10%の関税がかかる。なぜ、日産はこの時期に、英国での新モデル生産を発表したのか。

 「議会での議論が白熱している中での発表は不自然。英国政府との間で何らかのアグリーメントがあったのではないか」。自動車業界に詳しいある関係者はこう話す。日産の英サンダーランド工場ではジュークの現行モデルも生産しているが、合意なき離脱となると、EUへの販売では車体の輸出関税に加え、輸入部品にも関税がかかる。

 こうした状況を見越し、ホンダは今年2月、英国での四輪車生産からの撤退を決めた。日産も主力SUV「エクストレイル」の次期モデルのサンダーランド工場での生産計画を取りやめるなどしてきたが、同社と英国政府の関係は、歴史的に深い。サンダーランド工場では約7000人が働き、部品など関連産業も合わせれば雇用効果は3万人近いとされる。

 英国では7月下旬に就任したジョンソン首相が、10月末のEUからの離脱を主張している。英議会では合意なき離脱を防ぐために離脱延期を政府に義務付ける法案の審議入りが野党などの賛成多数で決まったが、ジョンソン氏は解散総選挙を提案するなど、強硬姿勢を表面化させている。

 ジュークの欧州販売は18年度に約7万台。年間50万台と英国最大の生産能力を持つサンダーランド工場の稼働率は8割程度で、その2割近くを占めるジュークの新モデルを生産することの影響は小さくない。現地での「エクストレイルショック」を和らげることに加え、雇用維持の観点から、ジョンソン政権の後押しとなると見えなくもない。

 欧州向けジュークの次期モデルを英国工場で生産することは以前から決まっていた。同社のもう一つの欧州工場であるスペイン工場は商用車が中心。資本提携する仏ルノーの工場で生産する選択肢もあるが「自社工場を使うことのプライオリティーは高い」(日産関係者)という。欧州向け車種はインドから輸出したこともあったが「今回は車種の置き換えなので、英国での生産を維持する選択は揺るがなかった」(同)という。

 とはいえ、欧州での販売価格が割高になる可能性は、ただでさえ欧州でのシェア低迷に悩む日産にとって、大きな懸念要素ではある。「設備投資などの税制優遇措置といった英国政府からの何らかのバックアップがあるはず」と別の関係者は指摘するが、19年4~6月期の営業利益が前年同期比98.5%減となるなど経営不振からの脱却を急ぐ同社への逆風は静まりそうにない。

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