ジーンズメーカー大手のエドウインは8月28日、東京都品川区で、秋田県の工場から縫製機械を持ち込み、ジーンズ製造の様子を見せる展示会を開いた。バイヤーやサプライヤーといった業界関係者だけでなく、クラウドファンディングに応じて出資した333人を招待。出資者には入場券とともに出資額に応じたジーンズなどを贈る初の試みで、「ジーンズ離れ」が指摘される20~30代の若い世代をひき付ける狙いだ。

エドウインは8月28日、東京都内で生産風景を見せる展示会を開いた

 東京・天王洲アイルのイベントスペース「B&C HALL」。独自にカスタマイズしたミシンなど計17台を使い、普段は秋田工場で働くオペレーターがデニム生地をジーンズに仕上げる様子に、来場者が見入った。ジーンズを製造する約45工程のうち、縫製やボタン打ちなど16工程を消費者の前で実演する「生産ライブ」だ。職人は正確かつ素早い作業を披露しつつ、来場者の質問に答えた。

 エドウインは7月、親会社の伊藤忠商事が出資するクラウドファンディングサイト「キャンプファイアー」でパトロン(出資者)を募集した。一口は2000円から3万円。応募すると展示会の入場券とともに、限定Tシャツやデニムポーチ、展示会の最中に仕上げたジーンズがもらえる。目標の100万円を大きく超え、約250万円が集まった。

 エドウインの細川秀和企画本部長は「中国や東南アジアなど海外製の衣服に慣れた若い世代に、国内縫製にこだわってきたエドウインの『流儀』に共感してもらいたい」と今回の企画の狙いを語る。出資者のうち4割は20~30歳代だったという。

 クラウドファンディングという手段を使った背景には、若者を中心に「ジーンズ離れ」が進んでいるという危機感がある。エドウインブランドは1961年に産声を上げ、「503」などがヒット。硬いデニム生地を縫製する技術や染色の技術という独自性もあり、国内のジーンズメーカーはアパレル業界の中でも特別な存在だった。

 しかし、ユニクロなどSPA(製造小売り)が手ごろな価格で生地が柔らかく、はきやすいジーンズを売り出すと、「特別だった『ジーンズ』が『ボトムス』の選択肢の1つになった」(細川氏)。アパレル業界では海外生産が当たり前となり、消費者はブランドのロゴなどが目立たない「ノームコア(究極の普通)」を好むようになった。

 「ベストジーニスト」を発表する日本ジーンズ協議会は2012年分を最後に加盟企業の生産統計の発表を取りやめた。加盟企業が手掛けるボトムスの生産量は2000年代以降下がり続け、ユニクロや無印良品など非加盟企業の実態を反映していないと判断したためだ。

 業界に逆風が吹く中、エドウインは12年、不正経理が発覚。債務超過に陥り、14年に伊藤忠商事の子会社となって再出発を図ることになった。一連の騒動で会社を離れた社員も出た。

 ジーンズ離れを招いた原因として、細川氏は「専業メーカーや小売店にも問題があった」と振り返る。アパレル業界でも特別な存在という自負から、「若者はジーンズの勉強が足りないという上から目線」で訴求を怠り、コアなジーンズファンが多い40~50歳代向けの製品作りや宣伝に流れた。

 実際、日本の若者がジーンズを嫌っているわけではない。ノームコアの反動からか、胸に大きなブランドロゴを目立たせたファッションを好む若者も増えてきた。細川氏は、「ステッチとブランドロゴがついているのがまさにジーンズ。今ならジーンズを再発見してもらえるかもしれない」と期待を込める。

 クラウドファンディングに応じた女子大学生(20)は「デニム生地は好き。生地が硬い伝統的なジーンズにも挑戦したい」と話す。男性税理士(27)も「職人の技術の高さに驚いた。普段ははきやすいチノパンが多いけど、おしゃれなジーンズもはいてみようかな」と語っていた。

 エドウインはジーンズだけでなく、デニム素材を生かしたファッション製品など横展開も図っていくという。今後もクラウドファンディングなどを活用して若い世代との接点を増やし、国産の価値などを伝えていけるかに、エドウインブランドの復活がかかっている

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