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 財務省などが19年5月に発表した、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく「対内直接投資等に関する業種告示等」の改正告示(8月から適用)が波紋を呼んでいる。

 国内ベンチャーファンドなどの有志でつくる任意団体は29日、上記改正告示について懸念を示す異例の声明を出した。改正によって、外国人投資家が対内直接投資をする場合、当局に事前届け出をする対象業種が拡大(財務省・経済産業省・総務省「追加等する業種」)。大半のベンチャーファンドが関わるソフトウエア開発、情報処理サービスなどの事業も対象に含まれることとなったからだ。

 「海外から国内へのリスクマネーの呼び込みに冷や水を浴びせることになり、有望なベンチャー企業が倒産してしまう」と悲痛の声が上がっており、ベンチャーファンド業界内で動揺が広がっている。

 外為法は、対外取引の正常な発展、日本または国際社会の安全の維持を促すことを目的としている法律だ。今回の改正の趣旨について、所管する財務省などは、「近年のサイバーセキュリティーの確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、我が国の安全保障に重大な影響を及ぼす事態を生じることを適切に防止する」ためとしている。要は、IT(情報技術)が発展する中、国の根幹となる技術を守るための規制強化という狙いがある。

 声明を出したのは、独立系ベンチャーファンド28社、個人投資家10人が8月27日に発足させた「Startup Investor Track(SIT)」。声明では、「我々はベンチャー企業への投資や育成に関わる立場として、改正の趣旨に、大いに賛同しております」と前置きしたうえで、「事前届を要する業種が拡大したことにより、これまで適時迅速な投資ができていたベンチャー企業に対しても、事前届け出が必要となり、日本の国益を増進する主体の一つとなり得る有望なベンチャー企業が、適時迅速な資金調達ができなくなり、倒産の憂き目にあうケースが出てくる可能性が懸念される」と訴えている。

 問題なのは、同法で規制対象業種は「事前届の受理日から原則30日間は投資実行が禁止される」と規定されている点だ。ベンチャー企業の大半は、イノベーションを起こして社会に役に立ちたいとの起業家精神に満ちあふれているものの、現実は、運転資金がギリギリで、思うように事業を回せていないケースも多い。1秒でも2秒でもすばやい資金供給を受けられるかどうかが、ベンチャーにとっての死活問題だ。しかし、規制対象拡大で「30日間の縛り」の網がかかれば、運転資金の確保がままならなくなり、事業を閉鎖するリスクが高まる。声明でも「(事前届け出の)申請後から(ベンチャーへの資金供給の)期間が迅速性を損なうことが現実に起こりうる」と強い懸念を示した。

 こうした声が相次いでいることについて、財務省外国為替室は「少子高齢化の中、日本が経済成長していくためには外国人投資家から国内への資金供給が重要であることは十分認識している。30日間の投資実行禁止期間について、法律上は原則30日間となっているが、審査の迅速化を進めている。実際、現対象業種の8~9割が5営業日内で審査は完了している」と説明する。

 一方、SITは「期間短縮への配慮があることは承知しているが、当局に届け出をする前の段階で、届け出書類の作成が複雑で手間もコストもかかる。改正を認知していないベンチャー企業も多く、これから運用上の工夫を何かしてほしい」と求めている。財務省も海外からのリスクマネーを阻害する意図はないようで、ベンチャー業界も今回の改正の趣旨には賛同していることから、国と業界との何かしらの解決策を探せる余地はありそうだ。

 折しも、東京都は「国際金融都市・東京」の実現に向けた構想を進め、外資系金融機関の誘致促進などを促進しているさなか。改正が外国人投資家にとって後ろ向きの規制ととらえられないよう、国には迅速な対応が求められる。

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