トヨタとスズキが2016年に業務提携に向けた検討開始を発表した記者会見
トヨタとスズキが2016年に業務提携に向けた検討開始を発表した記者会見

 トヨタ自動車とスズキが28日、資本提携で合意したと発表した。トヨタがスズキに1000億円弱を投じて4.9%出資、スズキも480億円相当のトヨタ株を取得する。2016年に業務提携を検討すると発表してから3年越しで資本提携の合意にこぎつけた。だが鈴木修会長が歩んだ旅路は3年どころではない。庇護(ひご)者を求め続けること38年、ようやくたどり着いた安寧の地なのだ。

 「まだ(トヨタから)連絡はこないのか」。この3年間、修会長は何度、この言葉を漏らしただろう。資本提携の可能性を巡る両者のやりとりはこの間、一進一退を繰り返していた。「会長は一刻も早く資本提携をしたがっていた。なにしろ本当のゴールは業務提携ではなく資本提携だからね」(スズキ関係者)。時には「トヨタには株を好きなだけ買ってもらっていい」と漏らすほど修会長が資本提携に執着したのはなぜか。

 話は38年前の1981年に遡る。スズキの小型車技術に引かれた当時世界最大の自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)がスズキに5%強を出資した。GM経営陣と修会長の良好な関係を背景にスズキ・GMの蜜月は長く続いたが、その関係強化を決定づけたのが業界関係者の間で「トヨタによるスズキ潰し」と言われる事件だ。

 95年にトヨタの社長に就任した奥田碩氏がスズキのライバルのダイハツ工業を子会社化し、スズキの軽自動車の牙城を崩そうとしたのだ。スズキはそれ以前に労働争議と排ガス規制対応への遅れで陥った経営危機をいずれもトヨタの助け(融資要請応諾とエンジン提供)で乗り切った過去がある。

 創業家の豊田家ではなく物事をドライに考えるサラリーマン社長の奥田氏がトップになったという事情もあるが、そんな恩人のトヨタから強烈なパンチを食らった修会長はGMの庇護下に完全に入ることを決断した。「中小企業のおやじ」を自認する修会長は、大手の傘に入らないと生き残れない、と信じていたからだ。

 そして98年、2000年とスズキはGMの追加出資に合意、GMはスズキ株20%を持つ筆頭株主となった。だがその蜜月も終わりを迎える。GM自身が経営危機に陥ったこともあり08年にGMとスズキは資本提携を解消、スズキは「路頭に迷う子羊」(当時のスズキ幹部)になった。

 別の傘を探さなければ。修会長は焦った。その焦りが「大失敗だった」(修会長)という独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携を呼び込む。VWは10年に19.9%のスズキ株を取得し連結対象にしたが、その後の両社の確執は知られた通り。強権的な経営手法で知られ、今月死去したフェルディナント・ピエヒ氏率いるVWが高圧的な態度に終始したこともありスズキは反発、今度は自ら資本提携の解消を申し入れたがVWが拒否し、国際仲裁にまでもつれこんだ。

 結局、15年にスズキはVWから自社株買いの形で約4300億円を支払い株を取り戻した。そして再び「路頭に迷った」わけだ。2度の外資傘下で懲りた修会長。そしてふと見ると、トヨタでは過去にスズキを2度救った豊田家出身の豊田章男氏が社長に就任していた。娘婿として鈴木家に入った修会長は先代から「何かあったらトヨタに」と言われていた。

 GM傘下に入るきっかけを作ったのもトヨタというのは皮肉だが、それは奥田政権下での出来事。先代からの言葉をもう1度かみしめた修会長は、豊田章一郎名誉会長に話を持ちかけた。そして16年、両社は業務提携の検討を始めると発表した。

 確かにトヨタとの業務提携は経営資源が限られるスズキにとって多くの果実を生むのは間違いない。だがそれまでの経緯を見ると「本丸」が資本提携なのは明らかだった。

 修会長は来年1月に90歳になる。そして来年3月にはスズキも鈴木式織機設立から100年を迎える。今度こそ、本当の庇護者を見つけられたはずだ──。修会長自身にとっても、そして会社にとっても、節目となる2020年を前に最高のプレゼントになったに違いない。

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