国内の携帯電話会社が2020年3月ごろに相次いで始める、次世代通信規格「5G」の商用サービス。消費者の5Gへの関心を高めようと、携帯各社のアピール合戦がここにきて活発になっている。
KDDI(au)は8月28日、「5G時代を先取りした」(高橋誠社長)とうたう新たな料金プランを発表した。2年間の契約継続を条件に、月額7880円でスマホからのデータ通信が使い放題になる「au データMAXプラン Netflixパック」だ。
この料金には米動画配信大手ネットフリックスの「ベーシックプラン」(月800円)も含まれ、データ通信容量の上限を気にせず同社のコンテンツを視聴できる。さらにKDDIが指定する固定インターネット回線サービスや家族割引を組み合わせれば5880円に抑えられる。9月13日に導入する。
5Gを見据えた新たな定額制プランを訴求するKDDIの高橋誠社長(左から2人目)
28日に記者会見したKDDIの高橋社長は「ピカピカな4G(第4世代)と、スペシャルな5Gを組み合わせて提供していく」と宣言した。
全国津々浦々をカバーする4Gエリアであれば、定額プランにより大容量の動画を安心して視聴できる。利用者が4Gから5Gのエリアに移れば、一段と鮮明な動画を見たりVR(仮想現実)などのリッチなコンテンツを楽しんだりできる――。そんな世界観をアピールしながら、5Gを徐々に定着させるのがKDDIの青写真だ。今回の定額制プランもこうした戦略の一環だという。
ソフトバンクは“未来感”に重点
一方、5G試験サービスの一般公開で先陣を切ったのがソフトバンクだ。5Gの「高速・大容量」「低遅延」「同時多接続」という特性を、実際のサービスを通じて消費者にいち早く体感してもらうのが狙いだ。
8月22日にさいたまスーパーアリーナで開催されたバスケットボール日本代表国際試合「International Basketball Games 2019」の対アルゼンチン戦。その会場でソフトバンクは5Gを使って「未来のスポーツ観戦」が体験できるサービスを提供した。
ソフトバンクはバスケットボール日本代表の国際試合で、仮想空間で試合を観戦する試験サービスを提供した
例えばVRのデモでは一般の来場者が、観客席でVR用ヘッドセットを装着。バスケットゴールの真後ろやコートの真横など、移動しなくてもアングルを手元のコントローラーで自由に切り替えながら観戦できるようにした。大容量の映像データを瞬時に送れる5Gの特性を生かしたものだ。
アングルを自在に変えながら選手のプレーを確認できるデモも用意した
また、計30台のカメラで撮った映像を合成して、タブレット端末上で自由な視点で試合映像を見られるデモも用意。ほかにも試合の様子を5Gネットワーク経由でライブ中継する体験ブースも設けた。4Kの高精細な映像と迫力ある音響で、あたかもコート近くにいるように感じる観戦体験ができる仕掛けだ。
ソフトバンクは7月下旬にも、音楽フェス「FUJI ROCK FESTIVAL '19」の会場で5Gの試験サービスを一般公開した。「音楽とスポーツはリッチなライブ体験ができる2大コンテンツ。5Gをアピールするのにうってつけ」(ソフトバンク)として、NTTドコモやKDDIに対して先手を打った格好だ。
そのNTTドコモは9月に始まるラグビーワールドカップで5Gの試験サービスを開始する予定。KDDIも同様の時期に始めると表明済みだ。
世界を見渡せば、海外のほうが5G商用化のスピードは速い。スマホ向けの5Gサービスは米国と韓国が「世界初」を競い合い、19年4月初旬に始まった。その約70日後、韓国では5G利用者が100万人を突破。日本の5Gは1年遅れとなるが、携帯各社は市場をどこまでスムーズに立ち上げ、海外に追いつくことができるだろうか。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?