(写真:アフロ)
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 公的年金の健全性をチェックするために国が実施する財政検証の結果が8月27日公表された。

 経済成長や国民の労働参加度合いの見通しに応じて6つのケースに分け、それぞれについて高齢者の所得代替率を示した。所得代替率は、将来の現役世代男性の平均手取り収入額に対する高齢者夫婦の合計年金受給額の比率を示しており、数値が高いほど現役世代に近い金額の年金を受け取れることを意味する。また今回の財政検証では、現役人口の減少や平均余命の伸びなどに応じて年金の給付水準を抑制するマクロ経済スライドの調整終了時期も算出した。

 検証によると、「高成長」に当たる「経済成長と(国民の)労働参加が進む」3つのケースで所得代替率は50.8~51.9%となった。いずれも2046~47年度にマクロ経済スライドの調整が終わった時点の見通しだ。

 一方、経済が「中程度」の成長にとどまる「経済成長と労働参加が一定程度進む」2つのケースでは、44.5~46.5%(2043~44年度時点でマクロ経済スライドの調整が終了)と50%を割り込んだ。ただし制度上は、所得代替率が50%を割る水準になる時には新たな方法を検討することになっており、あくまでも機械的にマクロ経済スライドを実施した場合の試算となる。

 そして、最も低成長の場合は2052年度に国民年金の積立金がなくなり、計算上の所得代替率は36~38%と3割台にまで落ち込むとしている。

 気になるのはどのケースが現実になる可能性が高いのか。厚生労働省はモデルケースを示していないが、標準的とみられるのは「経済成長と労働参加が進む」ことを前提とする3つのケースの中では最も低い、所得代替率50.8%(マクロ経済スライドの調整終了時期は2047年度)のケースとみられる。

 今回の結果について、厚労省は「全体として2014年の財政検証時とそれほど変わっていない」としている。だが、経済前提の使い方によっては不安が残るのは間違いない。経済成長のカギとなる生産性(試算では全要素生産性)は2017年度で0.3%にとどまる。これは所得代替率が最も低いケースに相当する。足元の低成長が続けば厳しい状況に追い込まれることになる。

 ただ、生産性の数値を過去20年平均でみれば0.8%、同じく30年平均にすると1%となる。これは前者が中成長のケース(所得代替率46.5%)、後者は先ほど挙げた、標準的とみられるケース(同50.8%)に近い。

 厚労省はこのほか、高齢者や女性に多い短時間労働者などの厚生年金への適用(加入)拡大を進め、65歳や75歳まで年金に加入し続けたり、受給開始年齢を遅らせたりする場合のオプション試算も実施。こちらでは所得代替率が大きく上昇するとした。

 公的年金への不安を取り除くには、まずは足元の低成長を脱して、経済を押し上げることが先決だ。さらに、より長く働き、公的年金加入期間を延ばす「支え手」を増やすことが、年金を維持するために残された道となる。公的年金の道のりはやはり平坦ではない。

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