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 高島屋は8月23日、中国の上海高島屋の閉店を撤回し、営業を継続すると発表した。同社は6月、8月25日に連結子会社の上海高島屋百貨を清算し、閉店すると発表していた。閉店まであと2日というギリギリでの撤回となった。

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閉店予定の2日前に営業継続が決まった上海高島屋
 

 上海高島屋は2012年12月、「上質な商品とサービスをフルラインで提供」する本格的な日本型百貨店を目指して、上海市長寧区で開業した。出店地は高級住宅街で、近くに商業施設がなかったことから「ポテンシャルが高い」(広報・IR室)と判断した。店内ブランドの4割は「日本発」とし、シンガポールやベトナム、タイの店舗と比べても日本を意識した構成とした。富裕層ファミリーや高所得のオフィスワーカーの来店を狙った。

 ところが、もくろみは外れた。開業3カ月前の9月、日本の民主党政権が尖閣諸島の国有化に踏み切ると、中国では反日デモが起こった。平和堂など現地に出店する日系店舗が暴徒に襲われた。反日の動きが落ち着いた後は、アリババ集団や騰訊控股(テンセント)などネットサービスが一気に普及した。スマートフォン片手に買い物をする風景は日常となり、リアル店舗は国内外の企業を問わず、逆風を受けた。

 上海高島屋百貨の最終利益は10億~30億円の赤字を垂れ流した。高島屋は家主と家賃の減額交渉を進めていたが、進展がなかった。さらに米中貿易摩擦の影響で、中国国内の景気の減速懸念が強まった。売上高は毎年10%前後伸びていたものの撤退を決断した。

 しかし、家主との交渉を打ち切り、上海高島屋百貨の清算準備を進めている中で「先方から条件変更の打診があった」(広報・IR室)。具体的には「正確には家賃の減額を提示されたのではなく、賃貸条件の変更だ。新たに合意した条件であれば、数年以内に黒字化できるとみて、精査している」(同)という。

 閉店直前に一転して営業継続となったことで、上海高島屋に入っていたテナントも撤退の準備を進めていたとみられるが、上海高島屋の関係者は「ほぼすべてのテナントが営業を継続してくれる」と話す。

 清算に伴い、計上予定だった20億~30億円の損失は抑えられる。ただ、上海高島屋を取り巻く厳しい環境がすべて改善されるわけではない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの細尾忠生・主任研究員(中国経済)は、「賃貸条件の変更で直前に撤退から継続を決めるというのは、戦略に幹(みき)がない印象を受ける」と手厳しい。中国では経済成長に伴い、北京や上海に洗練された高級商業施設が「掃いて捨てるほどできた」(同氏)といい、中国でも日本や米国と同様、ネット通販によるリアル店舗への逆風「アマゾンエフェクト」は厳しさを増していると指摘する。

 今回の賃貸条件の変更は、「棚からぼた餅」か、苦闘の継続なのか。細尾氏は「中国の成長が期待できるマーケットであることは変わらず、高い利益率を得ている日系企業は1980~90年代に進出して、地道に地元になじんでいる。出店を続けるならば、顧客層を明確にするなど戦略の再構築が求められる」と話す。仕切り直しでの中国市場挑戦は果たして成功するだろうか。

   
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