経営統合の協議を始めることを決めたドラッグストア業界5位のマツモトキヨシホールディングス(HD)と同7位のココカラファインは8月22日、決定後初めて記者会見を開いた。マツキヨHDの松本清雄社長は「資本業務提携から始め、のちのち経営統合に持って行こうと思っていた」と明かし、「一気に経営統合を進め、日本一への返り咲きができる」と期待を示した。ココカラの塚本厚志社長は「中長期的な企業価値の最大化を目指したい」と話した。

両社は2020年1月末までの合意を目指し、経営統合に向けた協議開始の覚書を16日に結んだ。実現すれば売上高約1兆円(2020年3月期計画)、店舗数約3000店と、ツルハホールディングスを抜く業界首位の企業が誕生する。企業買収を繰り返し、20年以上ドラッグストア首位だったマツキヨは16年度に首位から陥落していたが、ココカラと統合すれば、首位に返り咲く。松本社長は「アジアで一番のドラッグストアになりたい」と海外展開を加速する方針を示した。
業界6位のスギホールディングスからも統合提案を受けていたココカラの塚本社長は「マツキヨはとても優れた商品開発力、マーケティング力、店舗運営力がある」とマツキヨを選んだ理由を述べた。ココカラは自社でもPB(プライベートブランド)商品を開発しているが、塚本社長は「社員アンケートでも『マツキヨさんのPBが欲しい』という声がある」と持ち上げた。マツキヨのPBをココカラの店舗で販売するほか、共同開発も視野に入れる。
今回の統合協議先の選定では、ココカラがマツキヨとスギから受けた統合提案の検討を、5人の第三者と社外取締役1人で構成する「特別委員会」に委託する異例の展開となった。塚本社長は「特別委の判断に委ねたわけではなく、取締役会として自主性を持って決定した」と強調。取締役会でもFA(ファイナンシャルアドバイザー)を付けて検討したと明らかにしたが、スギを選ばなかった理由については「コメントを控える」と説明しなかった。

マツキヨは地方のドラッグストアの買収を繰り返し、店舗数を拡大してきたが、首位から陥落した後、利益率の改善に経営の主眼を置いてきた。売り上げの1割を占める規模になったPB商品の成功はその象徴だ。ココカラとの経営統合でその戦略は再び「量」を追うことになる。
日本チェーンドラッグストア協会の2018年度の調査によると、全国のドラッグストアは前年度比694店舗増の2万228店舗で、市場規模は同6.2%増の7兆2744億円と成長を続ける一方、M&Aなどで企業数は減少している。大手による中小の買収が続いてきたが、売上高数千億円規模の大手同士の再編はマツキヨとココカラが初の事例となる。現在最大手のツルハHDの鶴羽順専務は「業界の寡占化が進む中で、大手同士の状況も視野に入れて考えている」とM&Aに意欲を見せる。マツキヨ・ココカラ連合を皮切りにドラッグストアの再編が始まりそうだ。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?