7月の天候不順が嘘のように、8月に入ってから猛暑が続いている。厳しい残暑の中、高島屋の日本橋高島屋S.C.(東京都中央区)では意外な商品が店頭に並んでいた。ダウンコートだ。
同店は8月2日にダウンコートの特設売り場をオープンした。昨年より1カ月早く売り場を設けたという。東京都心では8月21日までの猛暑日(最高気温がセ氏35度以上の日)の日数が10日となり、1995年と並んで過去最多となった。そんな中でダウンコートの売り場設置を前倒ししたのは、10月に控える消費税の10%への引き上げをにらんでのことだ。
売り場に並ぶダウンコートの価格は平均で10万円ほど。高額品ほど消費増税の影響が大きいこともあり、駆け込み需要を取り込むため猛暑が続く8月から販売することを決めた。
消費増税を意識して「冬物」を前倒しで販売するケースはほかにもある。
京王百貨店新宿店では、例年より1カ月早めて、21日からフォーマルウエア売り場でコートの販売を始めた。同売り場の平均単価は約6万円、中でもコートは高額だ。2014年4月の前回の消費税引き上げ直前には、売り上げが約1.7倍になったという。
駆け込み需要の増加を見込んで営業時間も変更する。フォーマルウエア売り場のある4階を含む上層階は通常午後8時までの営業だが、9月5日から30日までの期間は全フロアで曜日を問わず、営業時間を30分延長する。また、例年は10月に開いている「秋のワインフェア」も9月に繰り上げる。
北海道や東北、北陸といった降雪エリアでは生活必需品である冬用タイヤ。カー用品大手のオートバックスセブンでは、店舗によっては例年より2カ月ほど早く、販売を始めている。

ブリヂストンなどタイヤ各社は8月から、日本国内での物流費上昇を理由に製品値上げに踏み切った。これを受けて、オートバックスセブンでは消費税率引き上げと同じタイミングの10月1日から店頭価格に反映する予定。ホイールとセットで2万~7万円台と高価なこともあって、売れ行きは好調だという。
ただ、増税前の駆け込み需要を狙った商戦の盛り上がりは、経済の回復基調に影響を及ぼさないよう、税率引き上げ前の需要増と引き上げ後の反動減を抑制しようという政府の思惑とは逆行する動きだ。一方である程度値が張るものについては消費増税前に買いたい消費者は多く、小売り各社はこうした需要に応えたいところ。各社は消費者庁の動向などを横目に見ながらの対応になりそうだ。
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