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 「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は8月13日、9月25日付で大原孝治社長兼CEO(最高経営責任者)が退任し、吉田直樹専務が社長に就任すると発表した。大原氏は国内のすべての役職から降り、米カリフォルニア州に本拠を移して米国事業に専念する。2015年に同社の会長兼CEOを引退した創業者の安田隆夫氏はシンガポールに住み、東南アジア事業の指揮を執っている。大原氏も同様に現地に居住して米国事業の指揮を執り、「アマゾンに対抗できるリアル店舗の業態を開発する」考えだ。

米国事業に専念すると発表した大原孝治社長(右)と吉田直樹次期社長

 大原氏は21日に開いた記者会見で、20年6月期までの中期経営計画の「売上高1兆円」などの目標を1年前倒しで達成したと振り返り、「『自分の権限を自ら剥奪(はくだつ)し、部下に与える』という当社の理念を粛々と実行する最良の機会になった」と社長交代の理由を話した。後任の吉田氏はマッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て07年に入社し、13年から専務として大原氏を支えてきた。

 大原氏は9月25日の株主総会で国内のすべての役職から退き、以降は米国法人の社長としての業務に専念する。会見では「世界最大の市場の米国で思いきり打ち込み、大輪の花を咲かせたい」と意気込んだ。

 PPIHは13年にマルカイコーポレーションを買収し、現在、カリフォルニア州で10店舗を展開している。大原氏も今後、拠点を同州に移すが、出店は同州に限らないという。「拠点を動かしてみると、見える風景は違う。メキシコが隣で南米が近い。容易に着手できるものからやっていく」と話し、米国内にとどまらずメキシコなどへの出店も示唆した。

 大原氏は、PPIHにとって米国は「大金鉱脈」と説明する。アマゾン・ドット・コムによるEC(電子商取引)の浸透、いわゆる「アマゾン・エフェクト」でリアル店舗が駆逐され、居抜き物件が破格で手に入ることが追い風というわけだ。不振の小売店舗を転換する手法は、日本で2007年に長崎屋を買収し、ドン・キホーテの出店スピードを加速したことと重なる。

 ただ、米国ではまだ「ドン・キホーテ」のような必勝パターンの業態がない。現在展開中の店舗は日系スーパーの業態で、ターゲットは日本人や日本食材を求める人に限られる。大原氏は「米国市場を掘り下げるには米国民すべてが視野に入る業態開発を進める必要がある」と話す。

 PPIHは18年春にECからの撤退を宣言し、リアル店舗の強化で成長してきた。「アマゾン・エフェクトに対抗できているのはドンキだけ」(大原氏)という自負がある。巨大な米国市場でリアル店舗の覇権を握れるか。挑戦が始まる。

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