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 横浜市がカジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する方針を固めたと報じられた。カジノ誘致に対しては住民や地元経済界の意見も分かれるなか、林文子市長が誘致に舵(かじ)を切った。その背景には何があるのだろうか。

 政府が国内3カ所で整備する方針を打ち出しているIR。羽田空港にも近く、クルーズ船の来港も多い横浜市はかねて有力候補の1つと見られてきたが、候補地の山下ふ頭を拠点とする港湾事業者でつくる団体「横浜港ハーバーリゾート協会」はカジノに反対の姿勢を示している。市民からもギャンブル依存症や治安悪化などに対する懸念の声が上がる。こうした声を受けて、当初は誘致に前向きな姿勢を示していた林市長も2017年の市長選を前に慎重姿勢に転換していた。

 そんな行政が再びIR誘致に前向きに転じるのは、横浜の経済を支えてきた観光地や港湾都市としての地盤沈下があるためだろう。

 いくつかのデータを見ていくと、横浜が直面している状況が見えてくる。まずは観光客数。横浜市によると、18年に同市を訪れた観光客は3420万人。17年に比べ5.8%減った。過去5年を振り返っても、3500万人前後で推移し、大幅な増加傾向は見られない。東洋大学国際観光学部の佐々木一彰教授は「かつての『ハマトラファッション』など横浜ならではのものがなく、ブランド力が落ちている」と指摘する。

 日本全体では増加しているインバウンド(訪日外国人)の取り込みにも後れをとっている。15年から17年の外国人宿泊者数は日本全体で6561万人から7969万人と1.2倍に増えたのに対し、横浜市の外国人宿泊者数は72万人から73万人と微増にとどまっている。

 外国人観光客を取り込み切れていないのは、クルーズ船の寄港回数からもうかがえる。かつては首都・東京の外港として日本の海の玄関口を担った横浜だが、クルーズ船の寄港回数では15年から博多港に国内首位の座を許している。18年の実績は博多、那覇、長崎に次ぐ、国内4位。日本で3カ所しかないIRが横浜にあるとなれば、国内外の観光客を引き寄せる格好の材料になるというわけだ。

 IRはカジノだけでなく、ホテルや商業施設、数千人規模の国際会議場などを併せ持つ複合施設だ。横浜市はIR開業後の観光客数が年間4400万~7800万人に増えるとし、経済効果(全体)は年間約7700億~1兆6500億円に達するとの試算で、IR誘致のメリットを示す。

 港湾都市として見ても、2018年時点でコンテナ取扱量では50位以下と、すでに「世界的」と呼べる港ではなくなった横浜。その姿は経済が成熟し、新興国の勢いに押される日本経済を反映しているともいえる。カジノを含むIRの誘致は港町のブランド復活につながるか。誘致の成否を含め、その行く末は成熟した社会、経済がどう生きていくかを象徴する事例となるだろう。

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