
18日、茨城県守谷市の常磐自動車道で「あおり運転」をし、さらに暴行を働いたとして指名手配されていた男が逮捕された。最近ではドライブレコーダーの普及により、悪質なあおり運転の様子がニュースやSNSなどで取り上げられることも増えている。今回の事件で被害者のドライブレコーダーに残された映像には、後ろから追い越してきた白い車が前方で蛇行運転を繰り返し、被害者の進路を塞ぐ形で高速道路上に停車、その後車から降りてきた男が運転席に座る被害者男性を窓の外から暴行する様子が収められていた。
実際にこのような事態に直面したら、どのように対応したらよいのか。今回の事件ほど過激な例はまれかもしれないが、あおり運転の加害者とトラブルになっているまっただ中で、冷静に110番通報するといった対応は難しい場合もある。
そんな時に助けになるのが、一部の自動車で搭載されているある機能だ。日産自動車が3月に発売した軽自動車「デイズ」で導入した「SOSコール」や、トヨタ自動車やホンダの多くの車種で利用可能な緊急通報システムの「ヘルプネット」だ。急病や危険を感じたときなどにボタンを押すとオペレーターとつながり、ハンズフリーでやりとりができる。事故や急病時を想定した機能だったが、自動車各社によるとあおり運転の対応策として活用しても問題ないという。
ドライバーが通報ボタンを押し、「あおり運転に遭っている」と告げると、オペレーターはすぐに警察に連絡。オペレーターとの会話が警察に切り替わり、ドライバーはそのままハンズフリーの状態で警察のアドバイスを受けて走ることができる。GPSの情報からどこを走っているかも伝わるため、「最寄りの〇〇サービスエリアに入ってください」など具体的なアドバイスを受けることも可能だ。
ヘルプネットを運営する日本緊急通報サービス(東京・港)によると、ニュースなどであおり運転が話題になる以前から通報は受けていたという。現在でも月に数件は通報があるといい、「緊急時に対応するためのシステムなので、あおり運転を受けた際にも使ってもらいたい」(同社)。かつてはこうした機能はトヨタの「レクサス」など一部の車種にのみ搭載していたが、最近では軽自動車にも広がってきた。衝突軽減ブレーキなどの運転支援技術に加え、緊急時に使えるこうした機能やサービスもクルマの新たな付加価値となりそうだ。
とはいえ、ボタンを押さずに済むのが1番よいのは間違いない。あおられないためにはどうすればよいか。あおり運転の防止を訴える警察庁のホームページには「思いやり・ゆずりあいのポイント」として一般ドライバー向けに以下のような項目が挙げられている。
- ・車間距離をとって運転する
- ・みだりに車線変更はしない
- ・ほかの車の前方に割り込んだり、並走している車に幅寄せしたりしない
- ・2車線以上の場合、一番左の車線を通行する
ドライバーからすれば当たり前のようにも聞こえるが、チューリッヒ保険会社の調査によると、実際にあおり運転をされたきっかけの上位3つは「車線変更」「追い越し車線を走り続けた」「法定速度を守って走っていた」だったという。自分では気づかないうちに「他の車の鼻先に割り込んでいた」「追い越し車線を先頭で走り続けていた」ということにならないよう、他の車を邪魔・刺激しない運転を常に心掛けるほかにない。
自動運転技術が進めば、適切な車間距離を保った走行が当たり前になり、あおり運転そのものがなくなる時代が来るかもしれない。自動車の安全機能の進化は進んでいる。ただ、今のところは危ない車に近づかないよう、周りに注意して運転することが大原則だ。
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