高速通信規格「5G」が商用化されて約1年半が過ぎた。しかし「高速大容量」「低遅延」「同時多接続」という特長を生かした新サービスはいまだ模索が続き、顧客体験は4Gから大きくは変わっていない。企業からは映像配信に注目が集まっているが、スマートフォンの画面サイズでは高精細な映像を配信しても大差ないのが現実だ。そこでNTTドコモは高精細の8K映像からズーム映像を切り出すライブ配信を実施。5Gの特長を生かしつつも、現実的なソリューションといえる。

 「5G契約数は500万を超え、本格的な普及期に入った」。NTTドコモの丸山誠治副社長はこう話す。同社の5G契約数は6月末時点で535万。22年3月末の目標である1000万契約へ向け、順調な進捗であると強調する。

 ただ、利用者からは「5Gで何が変わったのかよく分からない」という声が多く聞かれる。3Gではガラケーからスマートフォンという端末の大きな変化が起き、4Gでは文字や静止画から動画へとコンテンツの中身が大きく変わった。ところが5Gでは今のところ、端末もコンテンツも変化していない。店頭に並ぶスマホがほぼ全て5G対応端末に置き換わったため、5G契約しか選べなくなったというのが実態だ。

 実は通信会社自身、5Gでどのような新サービスを生み出せるのか答えを持っていない。そのため、様々な企業との“共創”を掲げる。ドコモの場合、「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」に約4000社が参加し、これまで300件近い案件を実施してきた。

ドコモは5Gを使った映像ソリューションに力を入れている
ドコモは5Gを使った映像ソリューションに力を入れている

 企業からの相談を分類すると映像関連が35%、XR(現実と仮想の融合技術)が28%、モビリティーが12%、ロボティクスが8%、AI(人工知能)が4%などとなっている。3分の1が映像関連なのは、5Gの特長である高速・大容量と相性がいいと考えられているからだ。

2K映像と差のない画質

 確かに5Gなら、映画のような長時間の映像データを短時間でダウンロードできるようになり、4K・8Kといった高精細映像もリアルタイムで配信可能だ。しかし、それが顧客体験を大きく変えるかといえば、疑問符が付く。映像が届く先の端末は今のところスマホがほとんどで、画面サイズは大きくても7型。4Kディスプレーを採用するスマホは限られており、そもそも7型程度なら従来の2K映像と大きな画質の差はない。

 ドコモの坪谷寿一5G・IoTビジネス部長は「将来的にはメガネ型などウエアラブル端末が出てきて、視野いっぱいに広がる画面で見られるようになるのではないか」と話すが、ドコモは現在、開発者向けにしかウエアラブル端末を販売していない。消費者の手元に届くのはまだ先のことで、当面はスマホ向けの新たなサービスを考える必要がある。

 ドコモは7月、ユニークな映像配信を試みた。超高精細の8K映像を、あえて従来の2Kにダウングレードしてライブ配信するというものだ。高精細そのものを売りにするのではなく「8Kウルトラズーム」と名付けた。どういうことか。

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