
「今は離婚するのをペンディングしている人たちが多い。いつになるかは分からないが、新型コロナが収束したときには、その人たちが決断をする可能性は十分に考えられる」
離婚事案を多く手掛けてきた新都心法律事務所(東京・新宿)の野島梨恵弁護士は、例年に比べて新型コロナ禍の4月、5月に離婚件数が減った状況をそう読み取る。先行きの不透明感などから、一時的に離婚に踏み切る夫婦は減っているものの、良好な夫婦関係を保てているかは別問題。コロナが収束すれば、それまで我慢する形で継続されてきた夫婦関係に終止符が打たれる可能性は否定できない。
加えて、社会全体が新型コロナウイルスの影響を受けている中で、関係性に変化が生じている夫婦は少なからずいるようだ。
それは、例えばDV(家庭内暴力)の相談件数が例年よりも増えていることからもうかがえる。厚生労働省の暫定のまとめでは、2020年4月の各自治体などに寄せられたDVの相談件数は1万3471件で前年同月よりも28.6%も増えた。5月は同18.8%増の1万3259件、6月は同19.0%増の1万2450件でやはり昨年よりも多い。
厚労省の担当者は、「あくまで推測」と前置きしたうえで、「相談窓口を増やした影響もあるかもしれないが、家庭内で顔を合わせる時間が増えた分だけ、価値観の相違が生まれてしまっているのでは」と話す。
同様の傾向は日本だけではなく、海外でも危惧されてきた。国連女性機関が4月に出した声明では「感染と都市封鎖を報告する国が増えるとともに、DVヘルプラインやシェルターに助けを求める声が増えている」と指摘。シンガポールやキプロスでの相談件数は30%増加しているとし、「安全・健康・経済的な不安からくる緊張と負担が家などに閉じ込められる状況で助長されている」「閉ざされた空間で相手を支配し暴力的な振る舞いが頻発する」と警鐘を鳴らしている。
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