全1589文字

 KDDIは9日、電動キックボードのシェアリングサービス「Lime」を運営する米ニュートロン・ホールディングス(カリフォルニア州)への出資を発表した。

 海外で「e-スクーター」とも呼ばれる電動キックボードは、モーターを内蔵し、時速20キロ前後で走ることができる自走式のキックボード。専用の駐車ポートを必要とせず、好きな場所で乗り捨てできる気軽さが最大の魅力だ。シェアサイクルよりもさらに手軽な小型(マイクロ)モビリティとして、都心部を中心に海外で爆発的に広がっている。

 電動キックボードのシェアリングは2017年後半に始まり、まだ2年弱しか経っていない新市場。Limeは既に25カ国、100都市以上で展開しており、運営するニュートロン社も時価総額20億ドルを超えるユニコーン企業だ。各国で電動キックボードが広がりを見せる中、今回KDDIが出資したことは日本市場開拓の追い風となる。

 だが、日本での普及にはまだまだ高いハードルがある。

 大きな課題の1つは法制度だ。日本では道路交通法上、いわゆる「原付」に分類されるため、ナンバープレートやブレーキのほか、ヘルメットの装着も必須となる。さいたま市と埼玉県川口市では、Wind Mobility Japan(東京・港)がシェアリングサービスを実験的に展開しているが、原動機付き自転車の運転免許を持った18歳以上を対象としている。

 現行の法制度では、自転車や歩行に代替する手軽な乗り物の選択肢とは言い難い。こうした中、普及のため規制緩和に積極的なのが福岡市。19年2月には自転車と同様の扱いで公道を走れるとする国家戦略特区を国に提案した。今回、業界最大手のLimeと、同じく業界大手の米Bird(カリフォルニア州)による福岡市での実証実験も発表している。

 また、景観上の問題も課題となる。従来のシェアサイクルなどと比べ、どこでも乗り捨てできる手軽さをメリットに世界中で拡大したが、一方で街中に電動キックボードが散乱するデメリットがトレードオフとなる。例えばロサンゼルスの市街地では、そこら中に電動キックボードが転がっているため、乗りたいと思えばどこでも拾うのに苦労しない。歩くのには少し遠い距離でも、4~5分乗ってレストランの前で乗り捨てられるのは快適だ。料金も、2ドル程度。利便性は高く「ぜひ日本でも」と思うところだが、街の至る所で乱雑に電動キックボードが転がっている風景は、日本の公共空間には似合わないと感じる。