ソフトバンクグループ(SBG)が投資戦略の修正にかじを切った。8月10日に開いた2021年4~6月期の決算説明会で孫正義会長兼社長が表明したのは、「中国テック企業への投資の事実上の停止」「上場株投資の縮小」、そして「ファンドへの個人出資」の3つだ。環境の変化に対応して成長への不安要素を取り除き、市場からの信頼を高めるためだ。自らが定義する「投資家ではなく資本家」の実践に向けた試行錯誤が続く。

決算自体は「それなりの成績だった」(孫氏)。連結純利益(国際会計基準)は7615億円と前年同期から39%減ったが、前年は米通信会社TモバイルUS(旧スプリント)の株式売却に伴う一時的な利益などが膨らんでおり、反動が出た部分が大きい。投資会社としての本業である「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」部門の利益は2356億円と82%増えた。米料理宅配大手のドアダッシュや米配車大手ウーバー・テクノロジーズ、医療スタートアップの米ガーダントヘルスといった投資先の上場企業の株式一部売却で利益を実現したほか、上場・非上場の両方で保有株の含み益も計上した。
だが決算発表翌日の11日、SBGの株価は1%以上下落しており、市場の評価は「様子見」といったところだ。ここ数カ月、SBGを巡る環境が激変しており、積極的にSBG株を買う意欲は乏しい。21年3月期に純利益を大きく押し上げた投資先である韓国ネット通販大手クーパンはその後株価が下落し、4~6月期には利益のマイナス要因になるなど、不透明感がぬぐえないためだ。
想定外だったのは、7月以降に中国のIT(情報技術)企業への規制強化が明らかになり、投資先の評価額が軒並み下がったことだ。孫氏自身も「中国の株式市場はハイテク株にとって受難のとき」と認める状況だ。6月末に米国上場した滴滴出行(ディディ)の株価は10日時点で35%下落した。アリババ集団を含めると、SBG保有株の約5割が中国企業で、これもSBGの先行き不安を高めている。
Powered by リゾーム?