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 「サービスは段階的に広げる。第1弾は『スモールローンチ』だ」

 楽天が8月8日に開催した2019年1~6月期の決算会見。三木谷浩史会長兼社長が10月1日に始める携帯電話サービスの展開方針について、こう語った。

2019年1~6月期の決算について説明する楽天の三木谷浩史会長兼社長
 

 三木谷会長が言うスモールローンチとは、開始直後は提供対象となるユーザーやサービス内容などを限定するという意味だ。「我々は通信ネットワークの安定性に大きな自信を持っているが、念には念を入れて」(三木谷会長)、当面は通信インフラの安定性を確認するという。そのうえで「(ネットでの申し込みを通じ)対象を広げる『ビッグローンチ』、最終的には店舗展開も含めた『グランドローンチ』とする」。詳細は9月上旬に発表する。

 携帯大手から回線を借りる格安スマホ会社だった楽天が、19年10月から携帯電話事業に参入すると決定したのは、総務省から電波の割り当てを受けた18年4月のことだ。それ以来、三木谷会長は既存の携帯電話市場に「革命を起こす」「殴り込みをかける」と事あるごとにぶちあげてきた。高止まりが指摘される携帯料金の引き下げにつながると消費者の期待は高まり、大手は「楽天がどんな料金戦略を打ち出すか分からない」(NTTドコモの吉沢和弘社長)、「楽天の料金プランを見てから対応策を講じる」(KDDIの高橋誠社長)などと警戒感を募らせてきた。

 こうした中で、いささかトーンダウンしたようにみえる今回の発言。背景には、日経ビジネス8月5日号「楽天の携帯参入、通信インフラ整備の難航で正念場に」で指摘したように、通信インフラの構築や商用試験の立ち遅れがある。楽天と取引のある複数の業界関係者の証言を総合すると、スマホとつながる「基地局」の設置や、その裏の通信インフラの商用試験が楽天の思惑通りに進んでいないもようだ。

 ある楽天グループ幹部も証言する。「ゼロから始める我々と携帯大手とではどうしても通信エリアに差が出てくる。だから、楽天の格安スマホの顧客に、一気に自社の携帯サービスに乗り換えてもらおうとは考えていない。10月時点では料金に敏感な地域、例えば関西だけでキャンペーンを打ち、その地域から通信エリアの整備に力を入れる。そこから徐々に広げればいい」

 現在の楽天と同様に新規参入事業者だったイー・アクセス(13年からソフトバンク傘下)が07年春にサービスを始めた際は、当初数カ月の間は通信料金を無償とした。サービス開始時点ではモバイルデータ通信サービスだけで、通信エリアも関東の一部に限られていたのが理由の1つだ。音声通話サービスを追加したのは通信エリアをある程度広げられた08年春からだ。

 日本の携帯大手が構築したインフラの通信品質やエリアの広さは、世界的にみてもトップクラスとされる。楽天は当面、東京23区や大阪市、名古屋市以外ではKDDIの設備を借りて地方をカバーするが、それでも大手に遜色ないエリアを展開するのは容易ではない。楽天は、大手に対して競争力のある料金戦略をいつ展開できるだろうのか。

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