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 大塚ホールディングス(HD)は8月8日、2019年12月期第2四半期の決算発表を行い、通期の売上収益を1兆4000億円に、営業利益を1740億円にそれぞれ上方修正した。1~6月期の連結決算も、売上収益は前年同期比8.5%増の6711億円ながら、営業利益は同22.9%増の965億円と、特に利益面の好調さが目立つ。

決算内容を説明する樋口達夫社長

 好業績のけん引役は、同社が「グローバル4製品」と位置付ける、抗精神病薬の「エビリファイメンテナ」と「レキサルティ」、ADPKDという遺伝性の腎疾患の治療薬「ジンアーク」、100%子会社である大鵬薬品工業の抗がん剤「ロンサーフ」の4品目だ。

 中でも18年4月に米国で承認されたばかりのジンアークが想定を上回るスピードで市場に浸透しており、19年1月にスタートした第3次中期経営計画で、当初285億円としていた米国での今年の売上高見通しを、445億円に上方修正したほど。同中計では、22年ごろには米国のみで1000億円に達する見通しを示している。

 ADPKDは現在、他に治療法もなく、それがジンアークの販売増につながっている。患者数は米国で13万人、日本で3万人、欧州に20万人いるとされる。グローバルでは数千億円の売上高に達する大型製品に成長する可能性がある。

 実はこの薬、「大塚らしい粘り強い研究開発で生み出した」(江村智博経営企画部長)ユニークな薬だ。もとは「水だけを出す利尿薬が欲しい」という医師の言葉に基づいて大塚製薬の徳島研究所で研究がスタートした。尿の排せつを促す利尿薬は、通常、ナトリウムイオンなども一緒に排せつするが、長く使うと低ナトリウム血症などの疾患になることが知られていたからだ。ただ開発の道のりは平たんではなく、最終的には26年がかりで09年に欧米で、日本では10年に「サムスカ」という名称の利尿薬として発売にこぎつけた。

 一方で、この薬と同じ働きをする化合物がADPKDという疾患の進行を抑えることを米国の研究者が見いだし、03年に論文を発表した。ADPKDに対しては有効な薬がなかったことから、大塚製薬ではADPKDに対する治療薬としての開発に着手。ADPKDは遺伝性の希少疾患であるため開発は容易ではなかったが、世界中の医師の協力を得て開発を進め、日本では14年にADPKDに対する承認を取得。欧州でも15年に承認された。ところが米食品医薬品局(FDA)はデータが不十分だとしたため、大塚製薬では追加の臨床試験を行い、18年にやっと米国でADPKDに対する承認を取得したという経緯がある。

 粘りの研究開発が功を奏した格好だ。徳島研究所で研究を始めたのは1980年代前半。30年以上に及ぶ研究開発が大きく花を開きつつある。

 実は現在、大塚HDの業績をけん引するグローバル4製品はいずれも傘下の大塚製薬もしくは大鵬薬品の研究所で創出した自社製品だ。だから粗利率が高く、特に利益面の好調さに結びついているのだ。

 大塚HDはかつて、1製品で6500億円を売り上げる抗精神病薬「エビリファイ」をけん引役に業績を大きく拡大させたが、エビリファイの特許切れにより16年12月期には2桁の減収、営業減益を経験した。そこで14年から18年までの第2次中計期間中に積極投資と構造改革を進めてきた。その中から出てきたグローバル4製品が同社の業績を支えており、かつての一本足打法のリスクは分散されている。中計で23年12月期に売上高1兆7000億円を掲げる同社は、第2の業績拡大期に差しかかったといってよさそうだ。

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