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 海運会社の旭タンカーや商船三井、三菱商事などは6日、電気推進(EV)船の開発会社「e5(イーファイブ)ラボ」を設立したと発表した。2021年半ばまでに、大容量の蓄電池を備えた「EVタンカー」を東京湾内で運航する計画だ。建造費がかさむEV化にあえて挑むのは、温暖化ガスなど環境規制への対応だけでなく、海運業界が抱える「2つの高齢化」が背景にある。

 自動車と同様、海運業界も環境規制の厳格化が進んでいる。20年1月から重油など船の燃料に含む硫黄分の上限が大きく引き下げられる。50年には国際海運における温暖化ガスの排出総量を08年比で50%以上削減するという「野心的な目標」(国土交通省)も掲げられている。

 環境問題への取り組みに熱心な北欧では、ディーゼルエンジンとEVを併用したハイブリッド船や、EVフェリー、EV遊覧船が積極的に導入されている。海運国家を自負する日本も環境対応には積極的だ。船の燃料や薬品など、液体を運ぶタンカーとしてEV化は世界初という。

e5ラボが建造予定のEVタンカーのイメージ図(画像提供:e5ラボ)

 EV船は環境対応にとどまらない「実利」も狙う。1つは船員の高齢化対策だ。

 日本内航海運組合総連合会によると、内航船員(日本人)約2万人のうち、50歳以上が過半を占める(2017年時点)。原因は若手の敬遠だ。内航船の船員は、2~3カ月を船上で過ごした後、陸上で1カ月は休むなど勤務体系は特殊だ。一方、船内はプロペラを動かすメインエンジンの配置が優先され、構造上後回しになる船室は狭くなりがちだ。エンジンの振動や騒音で睡眠はとりづらく、「どの船会社も若手の採用を強化しているが、うまくいっていない」(関係者)という。

 EV化により、船の部品点数は10分の1に減り、エンジンはなくなる。エンジンと違ってモーターを駆動するバッテリーは設計の自由度が高く、居住区に十分なスペースを充てることができる。エンジンの振動、騒音もない。居住環境が改善されれば、若手採用の後押しになるとの期待がある。

 船自体の高齢化も海運業界の課題となっている。寿命が20~30年とされる内航船のうち、14年以上の「老齢船」は7割を超える(隻数ベース)。20年以降に新たな船を入手し、20年以上運航するとなると、厳格化が予想される環境規制への対応は避けて通れない。「リプレース(買い替え)のタイミングで、EV船のニーズが高まるはず」(旭タンカー)とのもくろみがある。

 商船三井が船の製造ノウハウを、三菱商事はEV船で先行するノルウェーから技術導入の役割を担う。旭タンカーは完成したEVタンカーを、貨物船に燃料を供給するバンカリング船として3~5隻ほど東京湾内で運航する。相場が7億~8憶円という内航船の建設費は、EV化で2~3割高まるとみられる。一方、電気駆動により燃料費は低く抑えられる可能性があり、運航実績を踏まえて、タンカー以外への横展開も検討するという。

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