パソコンブランド「dynabook(ダイナブック)」が2018年10月に東芝からシャープ傘下に入り、3年近く経とうとしている。シャープは海外事業などの強化と21年度のIPO(新規株式公開)を目指すと表明してきた。新型コロナウイルス禍の広がりに伴って欧米では伸びたようだが、国内ではむしろシェアを落とした。世界初のラップトップ型パソコンを源流とし、かつて一世を風靡したダイナブックはどこへ向かうのか。

売上高に占める海外の比率が高まったと話す覚道社長(写真:村田和聡)
売上高に占める海外の比率が高まったと話す覚道社長(写真:村田和聡)

 「欧米での販路開拓が上手くいっている」。ダイナブック(東京・江東)の覚道清文社長はこう手ごたえを話す。特に、コロナ禍で日本よりも規制が厳しく、ロックダウン(都市封鎖)の続いた欧州が伸びたという。

 シャープへの傘下入りを発表した当時、中期経営目標で示した20年度の売上高海外比率の目標は42%。達成はできていないが、18年度(当時見込み)の22%から「4割に近いところまでいった」と覚道社長は話す。

 海外開拓は容易ではなかった。東芝時代は主に「TOSHIBA」ブランドで普及を目指していたが、採算が悪く16年に消費者向けから撤退した。さらに、シャープのグループとなったため19年度以降は新たにダイナブックブランドで販売する代理店を開拓する必要があった。

 状況は欧州で一足先に変わった。新型コロナの影響がロックダウンという形で広がり、小・中学校などでの遠隔授業の需要が「日本と比べものにならない」(覚道社長)ほど急増した。取り扱ってもらえる代理店の拡充を急ぐ作業と同時に、早期の納入を確約。英国やスペイン、フランスなどでエントリーモデルを中心に大型案件を取り込んだ。

 覚道社長は今後の目標として、米国・アジアの販路開拓や製品群の拡充により、ダイナブックとして「22年度の売上高は前年度に比べ1割増を目指す」と話す。

 海外市場で事業を拡大する背景には、国内シェアの低下がある。

市場シェアは下落

 日本市場では19年、「Windows7」のサポート終了に伴う買い替え特需があり、20年は小中学生に1人1台の学習端末を配備する文部科学省のGIGAスクール構想の特需があった。同構想はコロナ禍によって急きょ前倒しされた。IDCジャパン(東京・千代田)によると、20年の国内出荷台数は19年比0.1%減とほぼ横ばいの1734万台。トップはレノボ・NEC・富士通グループ(41.7%)、2位は日本HP(16.1%)、3位はデル(14.2%)だった。