世界ラリー選手権(WRC)の第9戦最終日のレースが4日、フィンランドで開催され、トヨタ自動車のオット・タナク選手が優勝した。最終レースから約1時間後に小型車ヤリス(日本名:ヴィッツ)のラリー車に乗ったタナク選手が、エンジンの爆音を響かせながらトヨタのサービス拠点に戻ると、エンジニアなど一人ひとりと抱き合い、喜びを分かち合った。タナク選手はWRCで今季4勝目を挙げ、総合首位を維持。トヨタは2017年のWRC参戦以来の3年連続でラリー・フィンランドを制した。
トヨタでモータースポーツを統括する友山茂樹副社長は現地で、「トヨタにとってWRCで勝つことは経営上の重要課題だ。ドライバーとエンジニア、経営などが一体となって取り組み、チームワークの勝利だった」と語った。

トヨタは17年にWRCに18年ぶりに参戦した。この年、モータースポーツ統括やスポーツカーの開発組織として立ち上げたのが「ガズーレーシングカンパニー」だ。小型車やパワートレーンなど、事業や技術開発の面で大きな役割を担うほかのカンパニーと同列の扱いだ。
そのトップである友山副社長が「WRCで勝つことが経営上の重要課題」と言うのは、同社の中で最少人数からなる同カンパニーを、巨大組織となったトヨタを改革する象徴と位置づけているからだ。
組織の壁なく短時間でいいクルマを作り上げ、レースで勝つ。レースでの成果はスポーツカーなどの開発に生かせるだけでなく、巨大IT企業との競争が本格化する中で重要になる経営と変革のスピードアップの手本にする。豊田章男社長も実際に何度もレースに足を運び、全面的に後押しするのもそのためだ。
豊田社長が訪れた前回の第8戦は、優勝目前の最終盤にマシントラブルでタイムを大幅にロスし、優勝を逃していた。友山副社長は「前回の失敗を引きずらず、うまく切り替えてくれた」と振り返った。

トヨタはフィンランドにチーム拠点を置く。ホームとはいえライバルとしのぎを削っており、楽な戦いではなかった。一時は出走する3台が1位、2位、4位となり、表彰台独占の期待も膨らんだが、3日目にアクシデントが発生。2台が予期せぬ落石にぶつかり、サスペンションの損傷などで大きく順位を落としていた。クリス・ミーク選手はリタイヤしたものの、ヤリマッティ・ラトバラ選手は粘って3位まで巻き返すというドラマもあった。
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