そのクルマが空に浮かび上がった瞬間、集まった報道陣からは感嘆の声が漏れた。飛んだのはNECが8月5日に発表した「空飛ぶクルマ」の試作機だ。
NECの空飛ぶクルマは全長3.9メートルで幅3.7メートル、高さ1.3メートル。大型ドローンのような外観をしている。離陸時重量は航空機製造事業法の適用外になる150キログラム未満で、残念ながら人は搭乗できない。

NECは同日、空飛ぶクルマが飛び交う環境に必要な交通整理技術や、機体間や地上との通信技術などの開発を本格始動させると発表した。その第1段階として、機体の管理に必要な情報や飛行の特性を探るために試作機を作製した。

NECが開発を進める背景には、多様な輸送・移動手段のニーズの高まりがある。都市部の混雑解消、通勤や通学、離島や山間部の移動、災害時の救急搬送や迅速な物資輸送など、空飛ぶクルマの活躍できる分野は少なくない。
政府も空飛ぶクルマの開発を後押ししていて、経済産業省と国土交通省は「空の移動革命に向けた官民協議会」を開き、ロードマップを取りまとめた。2023年を目標に事業をスタートできるよう、法整備などを進める必要があるとしている。
政府のロードマップがまとまり、ビジネスの道筋を立てやすくなったことで、NECは本格的に事業化に乗り出した。NECの石黒憲彦副社長は5日の会見で「空の移動革命に向けて、環境整備の観点から貢献していきたい」と空飛ぶクルマの事業化への意気込みを語った。
同社は日本発の空飛ぶクルマの開発を目指す一般社団法人CARTIVATOR(カーティベーター) Resource Management(東京・新宿)ともスポンサー契約を結び、機体の開発を支援する。NECの試作機はあくまでデータの収集のためのものであり有人飛行はできないが、CARTIVATORと情報を共有して人が乗れる機体の開発も促す。
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