8月1日、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は、2022年度の最低賃金(時給)の目安を全国平均で961円にすると決めた。前年度からの上げ幅は31円。昨年度、過去最大といわれた28円を上回る引き上げ幅となった。上昇率は3.3%に達する。

 最低賃金は毎年7月中に、労使間の交渉によって引き上げ額の目安が示され、その後、都道府県ごとに労使による協議を経て最終的な額が決まる。今年度は労使ともに、物価高を受けた賃金引き上げの必要性は認めつつも、大幅引き上げを求める労働者側と、少しでもコストアップを回避したい経営者側の双方の意見がなかなか折り合わなかった。そのため協議が8月に持ち越される異例の展開となった。

7月末、全労連が開いた最低賃金の大幅引き上げを求める集会で掲げられた横断幕(写真:共同通信)
7月末、全労連が開いた最低賃金の大幅引き上げを求める集会で掲げられた横断幕(写真:共同通信)

 決着の決め手となったのが「物価高に賃金上昇が追い付いていない」状態が長期化することへの懸念だ。22年4月、消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.5%上昇し、以降も同水準での推移が続いている。今回の物価高は食料やエネルギーといった生活必需品が中心であるため、家計に占める生活必需品の支出割合が高くなりがちな低所得者ほど影響を受けやすい。格差拡大を助長する上に、消費が冷え込む要因にもつながるため「引き上げやむなし」と企業側も考えたようだ。

 企業は今後、これまで以上にコスト管理や収益構造の改善が求められる。

 「原材料のコストアップよりも、昨年大きく引き上げられた最低賃金の支払いの方が収益を圧迫している。それなのに引き上げるとは」。こう頭を抱えるのは、都内で10店舗ほどの居酒屋を運営する企業の人事担当者だ。

 最低賃金は企業が労働者に支払う賃金の最低水準であり、それを下回る場合は50万円以下の罰則の対象となる。店では21年度、これまでで最大の引き上げ幅となったのを受け、少ない人員でも店が回るように店舗のオペレーション(運営体制)を見直した。ホールに配置するスタッフを4人から3人に変更する代わりに営業時間を2時間ほど短縮。毎週月曜日の定休日を廃止して売り上げ減をカバーするようにした。定休日を廃止しても総労働時間は減るので人件費の抑制につながる。

 ビジネスモデルの転換をした中小企業に支給される事業再構築補助金を活用し、タッチパネルで注文を受けられるシステムも導入した。人件費抑制に向けた対策がようやく一息ついたところだっただけに、担当者の落胆は計り知れない。

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