日銀は30日の金融政策決定会合で短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策(長短金利操作)の現状維持を賛成多数で決め、追加緩和措置の実施を見送った。結果から見ればほぼ何もしなかったことになるが、状況を考えるときめ細かく考えたとも言えそうだ。

日本銀行(写真:つのだよしお/アフロ)
日本銀行(写真:つのだよしお/アフロ)
 

 どういうことか。まず環境を見てみよう。米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備理事会)は30、31日のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%程度の利下げに踏み切ると予想されている。数日前にはECB(欧州中央銀行)も追加緩和の選択肢の検討に入った。9月にも利下げに動く可能性がある。このほか今年6月以降、オーストラリア、ロシア、韓国などが次々と利下げに踏み切っている。

 いわば、世界は再び利下げ・緩和競争に向かっているような状況だ。その中で何もしなければ、金利差縮小で円高をもたらし、景気に影が差す恐れもあるとの連想は当然出てくる。それでも追加緩和に動かなかったのは、日銀に打つ手が限られているからでもある。2013年4月の異次元緩和実施以後、16年1月には初めてのマイナス金利導入に踏み込み、同9月には10年物国債の金利をゼロ%程度に抑える「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に転じた。

 そこまでやっても消費者物価は「2年程度で前年比2%上昇」の目標に届かず、逆にマイナス金利は地方銀行を中心に金融機関の業績を悪化させている。市場には現在の超低金利を「少なくとも20年春ごろまで」続けるとしている政策金利の先行き指針(フォワードガイダンス=FG)の想定期間を「20年末」ごろまで伸ばすといった緩和策を予想する声も強まっていた。小手先のようでも一旦の追加緩和と評価はされるからだ。

 だが、日銀はそれもしなかった。なぜか。1つには、FRBが利上げから利下げ方向に動き始めたのは昨年末だったにもかかわらず大きな円高は進まなかったという見切りがありそうだ。「欧米の利下げを織り込んでも直近のドル円相場は1ドル108円程度。まだ追加緩和の必要はないと見た可能性がある」(野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏)。FGを温存して、一朝事ある時に備えるということだろう。

 もう1つは、仮に7月31日(日本時間8月1日未明)のFOMCでの利下げで円高が進むようなら、1日に予定されている雨宮正佳副総裁の講演で「FGについて触れるなど何らかの積極発言をする手もある」(大和総研主任研究員の長内智氏)。30日の決定会合の公表文の最後にも「『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧(おそ)れが高まる場合には、躊躇(ちゅうちょ)なく、追加的な金融緩和措置を講じる」とけん制を入れた。今の日銀は細い道をしぶとく進むしかない。

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