それでも「最も負けにくい運用手法の1つ」と証券会社アナリストが異口同音に言うのは、税制優遇があるからだ。イデコは運用益への課税がなく、しかも掛け金の全額が所得控除される仕組みがあり、税負担が減る。1円も運用益が出なくても、減税効果も含めれば「勝ち」になるのだ。もう一点、「60歳まで引き出せない」のも「負けにくい」理由だ。60歳未満で必要なお金が引き出せないのは不便だが、逆に言えば強制的に長期運用になる。複利効果を味方につけ、短期売買のボラタリティー(価格の上下)を平準化することができるという利点にもなる。

 利用者にとって利点の多い仕組みだが、広がっていない。厚生労働省によれば、2019年3月末時点で加入者数は121万人と、現役世代の総人口からするとわずか2%ほどの水準にとどまる。

 最大の障害になっているのが「企業年金との併用のしにくさ」だ。もし会社員がイデコに加入しようと思い立ったら、イデコの専門口座を開設し、会社の人事・総務関係部署などに「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」という書類を書いてもらう必要がある。これだけでも面倒だが、さらにやっかいなのは、勤める会社が企業型確定拠出年金を提供している場合だ。その場合、企業の拠出金の上限額を5.5万円から3.5万円に引き下げる必要があった。この変更によって、利用者の年金給付金が減ってしまうリスクもあった。

 今回、日本経済新聞が報じた「イデコ加入、全会社員に」というニュースは、この制約を撤廃しようという方針を厚生労働省が打ち出した、というものだ。DCを採用している企業の社員がイデコを利用する際にも、DCの掛け金を変更する必要をなくすことを目指す。これまでの年金制度の恩恵を毀損せずに、新たに自分で老後の備えを重ねられるようになる、というわけだ。

 DCを採用する企業の会社員で、イデコに加入していない人の数は、「正確に試算していないが、おおむね600万~700万人くらいいるのではないか」(厚労省)。

 老後に、年金と別に2000万円の資産が必要という金融庁の報告書が話題を集めた。老後の備えへの自助努力が求められる今、企業年金加入者にとって「4階建て」の年金という選択肢がより現実的なものになっていきそうだ。

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