「無印良品」を運営する良品計画が、店員による顧客の家の訪問サービスを強化している。インテリアに合わせた収納方法の助言など、無印良品の商品と関連するものだけでなく、電球の交換やブラインド掃除、絵の取り付けなど、同社の商品とは直接関係のないサービスまで広げている。
もとの狙いは「顧客の暮らしの不便を解消する」(良品計画)ためだが、商品を熟知した店員が訪問することで、家具や収納用品を家に置いたときのイメージができ、購入につながる場合がある。片付けや「断捨離」のブームを経験し、物を必要以上に持ちたくないと考える消費者との接点を増やす手法としても使えるとみる。

良品計画は、整理収納アドバイザー1級の資格を持つ店員が2人1組で顧客の家に行き、収納方法を助言する「整理収納訪問サービス」を2018年2月に始めた。価格は2時間で5000円。今年4月に開業した銀座店では、1時間1000円で電球の交換や絵の取り付け、ブラインド掃除など、自分でできないこまごまとした家の作業を請け負う「くらしのお手伝いサービス」を始めた。どちらも有料だが、「作業自体を売っているわけではない」(横山寛営業本部店舗サポート課インテリアアドバイザーマネージャー)ため、価格は抑えている。
横山氏は「やってみると潜在的な需要が大きかった」と整理収納サービスについて話す。利用者からは「洗濯機の上の壁が空いていて収納に使いたいが、誰に言えばできるのかわからない」などの声があったという。この場合、木造でねじを打つことができれば、収納棚の後付けなどを提案できる。「とにかく物が多くて片付け方がわからない」「どんな収納なら片付けやすいのかわからない」などの相談も多い。担当者は「全部必要なんですか」とカウンセリングをしながら整理を促し、「必要なものだけになってから、収納のしつらえの設計に入る」(横山氏)段取りだ。銀座店の「くらしのお手伝いサービス」では、採寸の要望が最も多いという。
どちらのサービスも、もともと店頭で問い合わせを受ける中にあった「家で実際に見てほしい」といった要望から生まれた。
利用者は提案を受けても、無印の商品を買う必要はない。だが結果的にほとんどの利用者が商品を購入するという。家で採寸を始めると、「実は子供部屋も不便だった」「このスペースが空いているからテーブルを置きたいけどサイズがわからない」など、当初、利用者自身も考えていなかった改善点に気づくことも多い。これらのサービスはもともと、暮らしの不便さを解消するために始めたもので「商品を売るためのサービスではない」(横山氏)が、家具などの大型商品の購入につながる場合もある。
出張する担当者は店で接客する店員なので、需要は大きいものの、出張要請が実施できるのは1店舗当たり週1回程度にとどまっている。良品計画には現在、整理収納アドバイザー1級の資格を持つ社員が全国で119人おり、21店舗で整理収納サービスを行っている。人員配置を工夫することで、9月以降、店舗起点のサービスの幅を広げる考えだ。
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