6月下旬、映画を短く編集した「ファスト映画」と呼ばれる動画をYouTubeに投稿し、著作権法に違反した疑いで、宮城県警が3人の男女を逮捕した。かねて広がっていたファスト映画に権利上の問題があると認知されると同時に、映画を見る動機や嗜好(しこう)がかつてとは変わっている事情が浮き彫りになっている。

ファスト映画を投稿しているアカウントの例(中島博之弁護士提供)
ファスト映画を投稿しているアカウントの例(中島博之弁護士提供)

 映画を10分程度に編集し、ナレーションなどを付けたファスト映画の多くは、話の起承転結が全て分かる仕組みになっている。流行してしまった背景に、短時間で作品の概要を把握できるような動画を求める若年層の需要を捉えていたという事情がある。

 コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の調査では、6月中旬時点でYouTube上に55のアカウントがファスト映画を投稿しており、動画数は合計2100本以上だったという。累計再生回数は約4億7700万回で、累計被害額は950億円を超えると試算している。著作権法による基準にのっとって推定したもので、有料で配信し、視聴者がストリーミングや一時レンタルで再生した場合の料金の相場から、権利者が得る金額が1再生あたり200円と想定して計算している。

 CODAの後藤健郎代表理事は「ファスト映画は2020年の春ごろから目立ち始めた。コロナ禍の巣ごもりも追い風になり、若年層を中心に人気が集まっていた」と話す。

 ファスト映画が広がったのは「タムパ(タイムパフォーマンス/時間対効果)」を意識する人が増えているためとみられている。多忙で時短を志向し、長い時間をかけて動画を視聴するのが耐えられない層がいる。若年層の間では、かつての高視聴率のトレンディードラマのような、これさえ見ておけば周囲の話についていけるというコンテンツが減ったことも、ファスト映画が人気を得る理由だという。

 インフィニティ(東京・豊島)の代表で、トレンド評論家の牛窪恵氏は「今のZ世代(1990年代後半~2000年代前半生まれ)は、自分が本当に見たいコンテンツと、それほど興味がないが周囲の話についていくために見るコンテンツとで、時間の使い方を分けている」と話す。そして、後者のようなコンテンツについては、話の起承転結が書かれているネタバレサイトを見たり、有料動画配信サイトなどで1.5倍速にして視聴したりして、時間をかけずに内容を知る行為が広がっていた。

 ファスト映画もこうした需要を捉えたことで多くの人が視聴し、中には再生回数が700万回程度にのぼる動画もあった。

続きを読む 2/2 視聴者が著作権を侵害する可能性も

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。