全1373文字

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開幕まで1年を切った。競技会場の整備などの準備が進む中、大会期間中は観光客の増加が見込まれ、道路や鉄道など交通網の混雑が懸念される。東京都などは大会期間中を想定して通勤ラッシュの緩和を狙った社会実験「スムーズビズ」に取り組んでいる。

 7月24日、東京都周辺で首都高速道路の交通規制実験が行われた。実験では、企業に配送ルートの見直しなど協力を要請、最大で36カ所の首都高入り口を閉鎖した。首都高の交通量を減らして、五輪期間中の大会関係車両などの通行を円滑にする狙いがある。

 五輪メイン会場の新国立競技場からほど近い外苑インターチェンジ(東京・港)。首都高への入り口には赤いコーンが立てられ車両の進入が禁止されていた。近くには警察官が立ち、誤進入を防ぐために誘導に当たった。

閉鎖された首都高の外苑インターチェンジ

 首都高では90%以上も利用量が減少した路線もあるなど、一定の効果があったようだ。一方で、首都高に並行する一般道では通常の2倍近くまで利用量が増えた地点もあったといい、首都高の規制の影響もあったようだ。また、外苑インターなどでは首都高を利用しようとして警察官に説明を受ける車両も複数台あり、規制の周知もさらに必要と言えそうだ。

 首都高だけでなく鉄道の混雑対策も並行して行われている。東京都などは通勤ラッシュの抑制や分散に向けて、時差出勤を呼び掛ける「時差ビズ」や在宅勤務などのテレワークに企業とともに取り組む。25日時点で時差出勤には1200社以上が参加を表明し、鉄道会社も臨時列車を運行したり、ラッシュ時間帯以外の列車を利用した通勤客らに提携店舗のクーポン券を配布したりするなど協力している。

 22日のスムーズビズ開始から4日、東京都の担当者は「まだ始まったばかりで評価する段階にはない」と話すものの、効果は出てきているようだ。東京地下鉄(東京メトロ)では日比谷、半蔵門、南北の3線でラッシュ時間帯前に臨時列車を運行。利用者のテレワークや時差出勤の取り組みも相まって最大で152~168%の混雑率は2~5%低下したという。

 ただ、訪日客の増加で五輪期間中の鉄道利用者は通常の1割近く増えるとの見方もあり、競技会場などでの混乱を防ぐためにもさらなる対策が必要となる。では、どのようにして利用者の協力を得ていくか。湘北短期大学の大塚良治准教授(経営学)は、クーポンの拡充を進めて利用者のスムーズビズへの関心を高めるとともに「企業への時差出勤やテレワークの導入の働きかけを着実に進めていくしかない」と指摘する。東京都の担当者は「企業には多大の協力をいただいているが、温度感には差もある」と話しており、企業の積極性を一律にどう高めていくかがカギとなる。

 今後も人口の増加が見込まれる首都圏にとって、東京五輪に向けた混雑への取り組みは五輪の成功だけでなく、将来の交通政策を考えていくうえでも大きな挑戦となる。9月6日のスムーズビズ推進期間の終了まで1カ月あまり。どれだけの課題を集められるかがポイントとなりそうだ。

タグ「1分解説」をフォローしませんか

旬の話題やニュースを分かりやすく手短に解説。フォロー機能を設定すると、「1分解説」タグが付いた記事が配信されると画面上で通知されます。「#1分解説」でフォロー機能を設定できます。