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英与党の保守党は23日、ジョンソン前外相を新党首に選んだ。24日に、メイ首相に代わり、新首相に就任する。ジョンソン氏は人間臭い言動から庶民派と言われるが、生粋のエリートだ。ブレグジットで庶民の生活が苦しくなれば、同氏の求心力は急低下し、英政治はさらなる混乱に陥る可能性がある。

 英与党の保守党は23日、ジョンソン前外相を新党首に選んだ。約16万人の保守党員による決選投票でハント外相に2倍近い差をつけ、圧勝だった。

 ジョンソン氏は結果が明らかになるとハント外相と握手した後、勢いよく演台に上がり、演説を始めた。最後は「ブレグジットを実現する。英国を結束させる。コービン(労働党党首)をやっつける」と威勢良く語った。24日にメイ首相に代わり、新首相に就任する予定だ。

ボリス・ジョンソン氏は23日、英与党の保守党党首に選ばれ、意気込みを語った (写真:ロイター/アフロ)
 

 党首選はスタートから、次期首相はジョンソン氏で決まりという雰囲気だった(参考:ジョンソン新英首相にによる合意なき離脱の可能性が高い)。カリスマ性はあるものの、人種差別的な暴言も吐くため、アンチも多い政治家だ。米国のトランプ大統領が自ら「英国のトランプ」と呼ぶなど、キャラクターが似ているとの指摘は多い。他の候補者が露出を増やそうとするなかで、失点を減らすためにむしろ露出を控えるような党首選だった。

 ようやく、17日開催の最後の演説会で本領を見せた。演説の終盤に突如、薫製ニシンを掲げ、「英国の生産者は怒り狂っている。EUの規制では1品ごとに保冷剤をつけることを要求しており、硬直的な規制で出荷コストが膨れ上がっているからだ」とEUを批判した。首相を決める緊迫の演説会で突然、薫製ニシン?と虚を突かれた聴衆は大受け。聴く者を笑わせながら、自身の主張をしっかり印象付けた。後にこの主張は的外れだったことが明らかになるが、メディアがこぞって取り上げて注目を集めるのは計算済みだったのだろう。

 ジョンソン氏の言動は常に耳目を集めてきた。それは同氏が常に大衆受けを狙っているからだ。英BBCのニュース風刺番組に出演したり、ロンドン市長として五輪で派手なパフォーマンスをしたり、屋外で泥沼にハマってみたりと、テレビで取り上げやすい言動が多い。ボサボサの金髪で体当たりのドタバタ劇やジョークを連発し、自ら道化師を演じているようだ。

 高級車に乗って現れる閣僚が多い中、自らスーツ姿で自転車に乗ってメディアの前に現れる。こうした気さくな姿が繰り返しテレビで流れ、その刷り込み効果なのか、ジョンソン氏を庶民派と呼ぶメディアも多い。世界的な傾向ではあるが、英国でもエリートに嫌悪感を示す国民が増えるなか、庶民派のイメージをフル活用し、人気を高めてきた。

 だが、ジョンソン氏は決して庶民ではない。育ちは根っからのエリートである。父親は欧州議会議員で裕福な家庭に生まれ、富裕層の子弟が通うパブリックスクール(私立校)のイートン校とオックスフォード大学を卒業した。とりわけイートン校はこれまで19人の首相を輩出するエリート校であり、ジョンソン氏は20人目の首相になる。

 飽きっぽく、オックスフォード大学でも勉強熱心ではなかったと言われる。女性とのトラブルも多く、6月にも新しい恋人と家で激しく口論して騒ぎとなり、隣人に警察を呼ばれた。これらのエピソードは人間臭いが、庶民か否かは関係ない。