さて、ビジネス化はできるのか?

首都高速が日陰になり、真夏日でも涼しいと思われる
首都高速が日陰になり、真夏日でも涼しいと思われる

 今回の試みは実証実験であり、運航は8月2日までの期間限定。あくまで目的は「ビジネスとして成立するか」の判断材料を集めることだ。

 ビジネスとして考えた場合、気になるのは電車やバスなど「ライバル」の存在だ。

 時間に関しては問題ない。今回の移動距離は勝どき駅から日本橋駅まで。地下鉄を利用した場合の移動時間は約20分と、差は10分程度。バスを利用した場合も約30分で船とほぼ同等になっている。乗り換えの手間を考慮すれば、船に軍配が上がるだろう。

 問題は価格だ。地下鉄やバスの運賃はどちらも200~300円程度で、ここにどこまで近づけられるかが課題になる。

 船通勤の価格はいくらになるのだろうか。東京都は検討中としているが、一度に多くの人を乗せられないため、割高になるのは仕方がないとも言える。実際に船に乗り、その心地よさを体験した身としては、電車やバスよりも高い値段を払うことに悪感情はない。

 しかし、船を降りた後に手渡されたアンケート用紙の質問内容からは、少々厳しい価格競争力が見えてくる。

 「今回の運航では、どのくらいの運賃であれば利用いただけますか(許容できる運賃を選択してください)」の選択肢は、「300円程度」「500円程度」「700円程度」「900円程度」「1000円以上」の5つになっている。

 電車、バスとほぼ同等の300円が先頭に来ていて、価格設定の並び順から察するに、東京都が設定したいラインは500円から900円の間にあると思われる。

 個人的にはこの範囲の価格であっても、週に1度であれば許容範囲内だと感じた。とはいえ、週に1度しか利用しないのであれば、そもそもの目的である「東京五輪の混雑緩和」の達成は遠のいてしまうだろう。

 日本の大手企業や行政機関が首都圏に集まる「東京一極集中問題」は深まるばかりで、東京五輪が終わった後であっても、東京の混雑は深刻化すると予測される。今回の船通勤の取り組みに限らず、混雑緩和策をビジネスとして実用化することは、社会全体で取り組むべき課題と言えるかもしれない。

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