セーフティーベストの有無や非常時の対応などについては特に説明はなかった。
待つこと約10分、曇天の中「ポーッ」という汽笛とともに、黎明橋の側にある船着場からゆっくりと船が出発した。船着場には次の便の船が停留していて、手を振る人の姿もあった。

運航時間はおよそ30分。車よりも少し早い速度で橋をいくつもくぐりながら船は進んでいく。「思ったよりも速いな」と感じたが、スーツに水しぶきが飛んで来るほどではない。意外にも船の揺れは少なく、乗り物酔いをしやすい記者も気分が悪くなることはなかった。
曇りのため屋根のない船でも日差しは気にならず、むしろ運河に吹く風は心地が良い。川の水はあまり綺麗とは言えずゴミも浮いていたが、嫌な匂いはしなかった。
乗客から声が漏れたのは、運航中盤、工事中の永代橋を過ぎたところだった。遠くではあるが、眼前に東京スカイツリーが現れ、急いでカメラを構える人もいた(動画)。天気が良ければ、SNS映えする写真も撮れたかもしれない。
記者の乗る船とは逆方向に、日本橋から勝どきへ向かう船も同時に運航していて、船同士がすれ違うシーンもあった(動画)。同じ時間に出発するため、ちょうど中間地点ですれ違った。
船はそのまま日本橋に向けて進み、ビル街へと入っていく。普段は車で通過している首都高速を下から見上げると、また違う趣があった。オフィスに徒歩で向かう道路の通行人も船に興味を持ったようで、写真を撮る人や手を振る人が多かったのが印象に残った。

予定の時刻通り、8時15分に目的地の日本橋に到着した。到着する頃には空も晴れていて、清々しい気持ちになる。通勤のために毎日満員電車に揺られるくらいなら、週に1回は乗ってみても良いと思えた。
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