全1605文字

 イランと米国や英国との緊張が高まっている。2015年に主要6カ国がイランとの間で、ウラン貯蔵量などを制限する核合意を成立させていたが、米トランプ大統領が18年5月に合意内容は不十分だとして離脱。米国がイランへの経済制裁を強化したことで当初は両国の対立が激化し、英独仏が核合意の維持に努めるという構図だった。だが、ここにきて英国とイランの対立が鮮明になってきた。

 イランの革命防衛隊は19日、中東のホルムズ海峡で英石油タンカーを拿捕(だほ)したと発表した。先立つ4日に英領ジブラルタル沖でイランのタンカーが拿捕されたことへの報復と見られている。ホルムズ海峡はイランとオマーンの間に位置し、最も狭いところでは30キロメートルほどしかない海峡だ。世界の原油の3割がホルムズ海峡を通過するため、日本を含む多くの国のエネルギー安全保障に深く関係している。

中東のホルムズ海峡で拿捕された英タンカー。写真は拿捕される前に撮影された(写真:Nico Kemps/AFP/アフロ)

 拿捕の経緯を巡って、英国とイランは非難の応酬を繰り広げている。英政府の説明によると、英タンカーは19日、ホルムズ海峡のオマーン側の領海内を国際法にのっとって航行していたが、「国家による海賊行為」(ハント英外相)のようにイランの革命防衛隊によって拿捕されたという。

 イランの説明は異なる。英タンカーが船の全地球測位システム(GPS)を止め、警告を受けても停船しないなど国際法に違反していたために拿捕したとしている。イランの国営メディアは拿捕の映像を公開し、正当性を内外にアピールしようとしている。

 護衛の体制も情報が入り乱れている。イアン・ダンカン・スミス元労働・年金相は、「英タンカーが拿捕される前に、米国からタンカーを保護する打診があったにもかかわらず、英政府が拒否した」と明かしている。トランプ大統領が各国にホルムズ海峡を航行するタンカーの自衛を呼びかけたものの、英タンカーを保護する意思はあったようだ。

 いずれにせよ、今のところイラン問題が解決に向かう兆しはほとんどない。英国はホルムズ海峡の安全を確保するために欧州各国による艦艇の共同展開などを検討しているようだ。今のところ米国とは一線を画し、イランに核合意の順守を呼びかけ、経済制裁に踏み切っていない。ただ、イランは経済制裁で窮地に陥っており、好戦的な態度が軟化するとは考えにくい状況だ。