薄氷の承認に、クリーム色のジャケットをまとった女性は胸に手を当てて微笑んだ。

 欧州議会は16日、ウルズラ・フォンデアライエン独国防相が次期欧州委員長に就く人事を賛成多数で承認した。親欧州連合(EU)派の中で反対を明言している議員がおり、投票前から否決の可能性も取り沙汰されていたが、過半数をわずか9票上回る僅差だった。11月に初の女性欧州委員長が誕生する。

欧州議会の承認を受け、フォンデアライエン独国防相は11月に女性として初の欧州委員長に就く(写真:ロイター/アフロ)
欧州議会の承認を受け、フォンデアライエン独国防相は11月に女性として初の欧州委員長に就く(写真:ロイター/アフロ)

 これまでのキャリアはタフネスそのものだ。もともとは医師だったが、父親が歩んだ政界に転身。その間、7人の子どもを育てながらメルケル独首相などに引き立てられ、独国防相に登りつめた。国防相としての手腕を不安視する声もあったものの、6年近く任務を全うした。

 後見人であるメルケル独首相は「献身的で説得力のある欧州人」と評する。

 フォンデアライエン新委員長は、議会承認の前後にいくつかの方針を示している。まず、10月末に控える英国のEU離脱に関しては、「正当な理由のためにより多くの時間が必要だとすれば、受け入れる用意はある」と発言し、離脱の延期に理解を示した。英国との再交渉には応じない姿勢を見せるものの、メルケル独首相がEUの中では英国に理解を示す立場をとっているため、離脱交渉に何らかの進展が出る可能性がある。

 議席を伸ばす緑の党などの環境政党を意識し、環境政策の方針も明らかにした。「就任後100日以内にグリーンニューディールを打ち出し、2030年までに1990年比でEUの二酸化炭素排出量を55%削減する」と従来目標を上回る目標を述べた。海外からの輸入品に対する「国境炭素税」の導入などを視野に入れているようだ。

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