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 シャープは7月17日、介護施設向けの「頭の健康管理サービス」を始めると発表した。認知機能を刺激するゲームを通じて高齢者のトレーニングを支援する。2025年に32万人の介護職員が不足するといった介護業界の人手不足が背景にある。

認知機能を刺激する20種のゲームを用意した。利用者の状況に合ったゲームとレベルをプレーしてもらう

 「介護サービスの利用者は25年に約604万人に達する。今後も介護施設は増えるだろう」。7月17日に記者発表会に臨んだシャープの村松佳浩・商品企画部長が語ったのは、介護サービスの人手不足に対する強い危機感だ。経済産業省の研究会は25年に介護職員が32万人不足すると予測している。

 介護職員の不足にどう対応するか。シャープは認知機能の改善に着目した。認知機能の低下を防ぐための個別トレーニングを、介護職員の人手をかけなくても施せるシステムの開発に取り組んだ。

 65歳以上の高齢者の人数は25年に3658万人となり、その2割に当たる約700万人が認知機能に問題を抱えると予測されている。認知機能の問題は、人が「要介護」に至る最大の理由でもある。政府は6月、認知症は「誰もがなりうる」という前提に立ち、発症と進行を遅らせる予防と、認知症の人が暮らしやすい社会を目指す25年までの「認知症施策推進大綱」を決定した。

 シャープが8月に始める「頭の健康管理サービス」の源流は、シャープの業務用機器の事業部のソフトウエア開発部門が12年に始めた奈良県の高齢者団体との実証実験だ。体調を記録するタブレット上のアプリを高齢者に使ってもらう取り組みを始めた。その後、学校やオフィス向けの販売が中心だったタッチ対応の40型ディスプレー「BIG PAD」を医療や介護などの新分野に広げる用途として採用した。

 主にデイサービスなどの通所型介護施設での利用を想定する。介護施設の職員が施設利用者にヒアリングしながら興味や関心の状況を入力すると、それに応じた認知機能の訓練計画を自動で作成する。利用者がICカードを読み取り機にかざすと、本人の訓練計画に基づいた種目や難易度のゲームが自動的に選択される。訓練の結果を利用者ごとに管理するシステムもシャープが提供する。職員は個々の利用者の訓練計画の進行度合いや認知機能の状況を見られる。「トライアルした施設からは生活機能の訓練にかかる手間を3~4割減らせるという声ももらっている」(村松部長)

 デイサービスの施設に1台のBIG PAD を導入し、30人の利用者の訓練計画を管理する場合の費用は年間約50万円。「導入した施設が生活機能訓練で介護報酬の加算を申請することも想定している」(シャープ)という。認知症の予防に役立つことを示せれば、通所型以外の介護施設などに導入が広がり、症状が重い要介護者を減らしたり、介護施設の業務効率を高めたりできる。

 「3000施設程度まで広がれば軌道に乗るだろう」。村松部長はある程度の規模になれば有意なデータが集まり、分析によってサービスを高度にできるサイクルが回り始めると期待する。「数年内にも」(村松部長)とする3000施設への導入を早期に達成し、効果を示せるか。それが後に続く介護効率化のビジネスの勢いを左右しそうだ。

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