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 こうした中で「民営化に伴い過剰なノルマのしわよせが現場へ向かっているのではないか」(金融業界関係者)という声が挙がっている。「ゆうちょ銀は自身のスマホ決済サービスと他のスマホ決済事業者からの手数料の両輪で稼ごうとしている」(大手スマホ決済事業者幹部)との指摘が業界内で相次いでいるのにはこうした背景がある。

 だが、ゆうちょ銀のこうした一連の行動は「優越的地位の濫用に当たる可能性がある」と語るのは公正取引委員会に出向していた経験を持つ東京八丁堀法律事務所の野田学弁護士だ。

 「ゆうちょ銀の市場における立場を鑑みるに、事業者が取引先を変更できる可能性が低く優越的地位が認められる可能性がある」(野田弁護士)。また、「十分な協議をせずに市場の価格とかけ離れた著しく高い料金を一方的に設定をした場合、不当に取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定したという要件を満たし、独占禁止法に抵触する可能性がある」(野田弁護士)という。

 実際、あるスマホ決済事業者はゆうちょ銀の行為について個別に公取委へと相談を持ち掛けているようだ。公取委も水面下でスマホ決済事業者へのヒアリングを開始。スマホ決済事業者が銀行預金口座に接続する上でのコストや条件、問題点についてヒアリングを始めている。

 では、ゆうちょ銀はどう考えているのか。

 ゆうちょ銀行コーポレートスタッフ部門経営企画部の表邦彦担当部長は「ゆうちょPayの戦略と各種サービスの値上げは完全に別の話」と断言。スマホ決済事業者に対する値上げは「収益基盤の強化の一環として行われている」(表部長)と語った。事実、ゆうちょ銀は4月から決済送金サービス料金を一斉に値上げしている。時期こそずれているものの、こうした一環で手数料が見直されているとした。

 キャッシュレス決済は表と裏で様相が大きく異なる。対消費者においては派手なキャッシュバックキャンペーンが繰り返されているが、裏側では金融機関とスマホ決済事業者の間でシビアな手数料の交渉が続いている。

 貯金残高約180兆円と国内最大の残高を誇る金融機関であるゆうちょ銀の動きは、今後のキャッシュレス決済社会の進展に大きな影響を及ぼす。ゆうちょ銀が他行と足並みをそろえるのか、それとも自身の収益基盤の強化に突き進むのか。公取委の動きも含めて今後、決済業界が注視することになる。

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