日経ビジネス電子版が「 HISがユニゾ株買い増し、敵対的TOBに発展も 」で報じた通り、旅行大手のHISが7月10日、東証1部上場でホテルや不動産を手掛けるユニゾホールディングス(HD)株をTOB(株式公開買い付け)で45%まで買い付けると発表した。これまで複数回、水面下で提携のラブコールを送ってきたが相手にされなかった末のTOB。いわば公開プロポーズは実るのか。

HISの沢田秀雄会長兼社長(右)がTOBの狙いを説明した(写真:稲垣 純也)

 HISは同11日からユニゾ株を1株3100円で買い付ける。過去半年の平均株価に対して5割以上のプレミアム(上乗せ)を付けた価格だ。買い付ける上限は45%。HISは既にユニゾHD株4.79%を持つ筆頭株主のため、事実上TOBで買い付けるのは約4割となる。上限に達しない場合は、すべての株を買い付ける方針だ。

 実はHISは2018年秋から複数回、業務提携や資本提携の打診をユニゾHDにしてきた。だが検討をするという回答は得られず、具体的な協議の場が設けられることはなかった。HISは申し入れと合わせて株式市場でユニゾHD株を買い付け、株主としての存在感も強めてきたが、それでもユニゾHD側の態度は変わらなかった。

 そのため「これ以上の協議の申し入れを行ったとしても協議の実現は期待できないと思われ、資本的関係をより強化したうえで協業の可能性に関する協議を進めたいと公開買い付けを行う」という決断に至った。要するになかなか振り向いてくれない相手を振り向かせようと、相手の承諾なく強引に公開プロポーズに踏み切った格好だ。

 今回はユニゾHDに相談していない、つまり事前合意のないTOB。今後、ユニゾHDの経営陣はTOBに「賛成」「反対」もしくは「応じるかどうかは株主の判断に任せる」などの態度を決めることになる。だがこれまでの経緯を考慮すると、すんなり「賛成」してくれるかどうかは、かなり不透明と言わざるを得ない。

 7月10日の会見でHISの沢田秀雄会長兼社長は「敵対的ではないと思っている。お互いが協業すれば大きなプラスになる。そして(両方の)株主に喜んでいただける」と述べた。そのロジックはこうだ。

 HISが持つ旅行事業を生かしユニゾHDのホテルにお客を送り込めば、ユニゾHDのホテル事業の稼働率上昇、利益率向上につながる。HISの海外網を生かせば、将来ユニゾHDが海外にホテルを展開することが可能になり、潜在的な成長力が高まる、というものだ。

 一方のHISは、ユニゾHDのホテル25軒を加えればHISの67軒(建設中・交渉中含む)と合わせて92軒になるため「ホテル100軒構想の実現が早まる。まず国内のホテルチェーンでトップ10に入りたい」(沢田会長)と意気込む。また「不動産は今後の収益の柱とすべく準備している。それを加速・実現させるため」(HISの中谷茂取締役)にもユニゾHDの持つ不動産事業のノウハウが必要だという言い分だ。

 確かにプレミアムは一般的なTOBの水準よりも高い。それにHISの主張通り、ユニゾHDの企業価値が上がればユニゾHDの株主にとってはいいことばかりだろう。だからこそ、HISは株主の支持が得られるとして断りなしのTOBに踏み切った。だが敵対的TOBになるかどうか、その態度を決めるのはユニゾHDの取締役会だ。株主ではない。

 今回の件を誤解を恐れずに分かりやすく言えば「彼氏、もしくは彼女がなかなか振り向いてくれないから、お土産を持ってご両親の理解をもらいにいった」とも言えるだろう。外堀を埋めてなんとか振り向いてもらおうという戦略だ。だが、世の中を見ると、親の意向をきかない子供はたくさんいる。株主の支持を得ればゴール、というわけではない。HISの賭けの結果は果たしてどう出るだろうか。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。