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 日本郵政傘下のかんぽ生命保険で契約者の不利益につながる保険契約の乗り換えが見つかった問題を巡り、保険販売元の日本郵便とかんぽ生命は7月10日に会見を開き、謝罪した。同社は6月、保険商品の乗り換え販売時に、健康状態などを理由に保険が再契約できず、無保険状態の顧客を作ってしまったケースが1万8900件あったことを発表したばかり。ずさんな販売体制が再び露呈したことで、金融庁が販売体制の改善を求める可能性も出てきた。

日本郵便の横山邦男社長(左)とかんぽ生命の植平光彦社長は7月10日に会見を開き、謝罪した
  

 今回明らかになったのは、旧契約の解約から新契約までの4~6カ月間、顧客が無保険状態に置かれていた事案や顧客に保険の新旧契約を重複して結ばせ、保険料を半年にわたり二重に払わせたという事案だ。こうした事案は多数あったとされるが、会見で具体的な件数は公表されなかった。内部資料によると前者は4万7000件、後者は2万2000件と言われている。

 問題の背景には、旧契約の解約タイミング次第で保険営業員に支払われる手当の額が変わる、日本郵便の保険営業員独自の評価体系があった。新契約を結ぶ3カ月前から契約後6カ月までの間に旧契約を解約すると、その契約は「新規」とは見なされず「乗り換え」と判断される。乗り換えの場合、新規契約に比べて営業員に支払われる手当は半分となる。そのため満額の手当欲しさで旧契約を解約して3カ月以上経ってから新契約を結ぶ、もしくは顧客の旧契約を解約せずに新契約を結ばせ、6カ月が経過した後に解約させるなどしていた。

2016年ごろから不正が横行か

 日本郵便の横山邦男社長は「低金利環境の中で貯蓄性保険の優位性が薄れ、保障に重きにおいた保険商品の営業への転換を進めてきたが、販売目標は旧態依然のままで現状に合っていなかった」と説明、今回の問題の原因は時代に合わない保険の売り方を放置してきたことにあるとした。営業員の報酬体系や営業現場のマネジメントの問題については、質問が出るまで触れなかった。

 また横山社長は「8月以降は販売目標を実態に即して全体的に下げる」と語った。報道陣からは「引き下げるということはこれまでの目標が過剰だったのか」との質問が出たが、横山社長は最後まで「過剰だった」とは認めなかった。

 両社は問題が起こった時期についても明らかにしなかった。今後、社内調査に加え、日本郵政とかんぽ生命、日本郵便の3社による第三者委員会を設立して問題の実態解明に当たるという。「問題を認識したのは最近のことだ。4月の(かんぽ生命の)株式2次売り出しの時点では重大な問題として認識していなかった」(横山社長)。

 しかし、現場の郵便局員の声を聞くと、不正はここ数年の間、常態化していたとみられる。千葉市内のある郵便局に勤める職員によれば「新しい契約を結んでも、既存の契約をすぐに解約しないやり方は以前からあった」と証言する。この職員によれば、16年くらいからこうした手法が横行していたという。

 16年といえば、15年11月の郵政グループ3社の株式上場の翌年という時期。「販売成績を高めるべく、経営上層部から現場に対して過剰なプレッシャーがあったのではないか」。多くの保険業界関係者が今回の問題は、上場と関係あるのではと見ている。

 かんぽ生命の植平光彦社長は「一定のボリュームがある事案なので、すぐにはご報告できないと思うが、年内には問題の実態や調査結果に関し経過報告をしていきたい」と語った。後から「分かった時点でしかるべき対応をする」とは付け加えたものの、早急に問題に対応するという意識は薄いと言わざるを得ない。不正を生んだ体質が変わるのか。不安はなお大きいままだ。

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