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 総資産で地方銀行最大手の横浜銀行と3位の千葉銀行は7月10日、業務提携をすることで合意したと発表した。法人・個人の幅広い領域の営業面で協力し、事業承継など中小企業向けの金融支援サービス、個人向けの相続関連サービスなどを提供する。超低金利が続き、地銀を取り巻く経営環境が厳しい中、他行とタッグを組むことで苦境を乗り切る姿勢を打ち出した。

握手を交わした横浜銀行の大矢恭好頭取(左)と千葉銀行の佐久間英利頭取。シナジー効果を出すことができるか、注目が集まる

 提携の名称は、「千葉・横浜パートナーシップ」。両行は協力してM&A(企業の合併・買収)支援や協調融資、企業支援セミナーの共同開催、相互人材交流などを行うとしている。今後、協議会を設置して具体的に検討していく方針だ。

 今回のように地銀同士が連携すること自体は珍しいことではない。例えば、地方創生にからみ、福岡銀行や千葉銀など全国の有力地銀9行が協調融資や取引先のM&A(合併・買収)支援で協力する広域連携をしたり、同様に伊予銀行など四国4行が「四国アライアンス」を結んだりした例がある。

 今回、横浜銀と組む千葉銀は既に武蔵野銀行(さいたま市)と「千葉・武蔵野アライアンス」を組んでいる。今秋には武蔵野銀と共同店舗を都内に出店し、東京都心部での融資獲得を目指すとしている。

 だが、今回の包括提携にはこれまでの地銀連携にはない2つの大きな意義がある。

 1つは、全国トップ地銀が連携するというインパクトだ。地銀界で圧倒的な存在感がある両行の提携が、他の地銀に危機感を与えるのは必至で、地銀の合従連衡が今後進む号砲となる可能性がある。ある地銀幹部は「2行がどのような提携効果を生むのか、興味津々だ」と打ち明ける。

 横浜、千葉両行は、重複店舗が少なく、互いの取引先を紹介できることから、販路拡大の面などで取引先にとってもメリットは大きい。千葉銀の佐久間英利頭取は「地理的、経済的に結びつきが強い千葉県と神奈川県をそれぞれ地盤に持つ両行が、地域情報を共有・相互活用することで、より高度なソリューションが提供できると確信している」と強調する。

 もう1つは、地銀を取り巻く環境がいかに厳しいかを今回の提携が浮き彫りにしたことだ。営業エリアが限られる地銀は、メガバンクと比べて低金利の影響を受けやすい。金融庁の試算によると、地銀の約半分にあたる54行が貸し出しなどの本業で赤字に陥っており、日銀は10年後の2028年度には約6割が最終赤字になるとの厳しい試算を出している。情報化が進み、異業種からの参入も相次ぐ中、地元で強固な地盤を持つ横浜銀、千葉銀の両行が連携して厳しい環境に立ち向かう姿勢を鮮明にしたことは、もはや単独では生きられない業界の現実を突き付けた。

 課題はシナジーをどう創出するか。これまでの地銀の経営統合の形は、銀行同士を合併する方法と、持ち株会社を作って2行を傘下に置く方法があり、最近では持ち株会社設立後に時間をおいて傘下2行を合併するケースが多い。

 持ち株会社化のケースでは肥後銀行(熊本市)と鹿児島銀行が設立した九州フィナンシャルグループ(FG)、持ち株会社化後の合併のケースでは、三重銀行(三重県四日市市)と第三銀行(三重県松阪市)を傘下に持つ三十三FGなどが出ている。ただ、統合に関して金融庁の幹部は「ただの形だけ作っても意味はない。シナジー効果をどう出すかの中身が重要」と語る。横浜銀と千葉銀が今後、提携という形でシナジー効果を大きく出すことができれば、今回のような提携が再編のあり方の1つの選択肢になりうる。

 ただ、店舗やシステムの統合による効率化など大きな痛みを伴わない連携は、自分の地盤を守るためのただの〝不可侵条約″にすぎないと見られかねない。提携の効果について、横浜銀の大矢恭好頭取は「トップライン(売上高)で3ケタ億円以上の提携効果を実現していきたい。主眼はソリューションの提携だ」と話し、コスト削減などの効率化の効果については「検討していく」と述べるにとどめた。

 今回の提携が、新たな地銀の合従連衡の形となるか、事実上の不可侵条約に終わってしまうのか。2行の提携の行く末は地銀再編の今後にも影響を及ぼしかねない。

    
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