カレーハウスCoCo壱番屋のメニュー例(インドでのメニューは決まっていないためイメージ)
カレーハウスCoCo壱番屋のメニュー例(インドでのメニューは決まっていないためイメージ)

 「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)を運営する壱番屋が、三井物産と組み、インドに進出する。壱番屋にとって、インドは「カレーの本場で特別な国。昔から進出を考えていた」(壱番屋の経営企画室)。悲願の進出だ。しかし、今回の進出スキームの話を持ちかけたのは、壱番屋ではなく三井物産。三井物産がインドでカレーに挑戦する狙いとは――。

 進出にあたり、6月28日にインドで共同出資会社を設立した。資本金は約3億円で、三井物産のシンガポールの現地法人が60%、壱番屋が40%を出資する。三井物産が合弁会社の経営権などでインドでの知見を生かし、壱番屋は店舗運営や商品開発などを担当する。

 出資比率を見ると、三井物産が主導であることがわかる。しかし、三井物産はインドで外食事業を展開したことがない。日本でも外食事業を展開しているイメージを持つ読者は少ないだろう。なぜ三井物産がインドでココイチを展開するのか。

香港の店舗
香港の店舗

 その背景にあるのは、中期経営計画だ。三井物産は2017年に発表した中計で、「リテール・サービス」領域を、強みを発揮できる新たな成長分野として掲げている。この領域を強化するために、足元で力を入れているのが、消費者と直接接することができる事業の拡大だ。消費者と直接コミュニケーションできる拠点を持つことで、消費トレンドの変化をいち早く察知し、商品企画や開発、マーケティング機能を強化させることが狙いだ。そこから新たな事業構築を目指す。

 そのため、この1年ほどで消費者と直接接点を持てそうな事業への参画を加速させている。国内ではイタリアの高級チョコレート・ジェラートブランドの日本法人を設立したり、青果物の販売などを手掛ける小売業「旬八青果店」を展開するアグリゲート(東京・品川、左今克憲社長)に出資したりした。中国では畜水産物の加工・販売事業に本格参入するため、今年9月に合弁会社を設立する。

 そうした中で、ココイチを選んだきっかけをもたらしたのは、三井物産のインド現地法人のスタッフだった。スタッフが研修で来日した際、ココイチのカレーを食べたところ、「なんておいしいんだ!」と感動したという。インドに帰国後、その感動を社内で話していたところ、インドに駐在する日本人スタッフがココイチのことだと気付き、ココイチに話を持ちかけたのだという。

 2020年初頭に1号店を開店する計画で、首都ニューデリーを中心に検討する。最初の5年間で合弁会社の直営店舗として10店舗を展開し、その後フランチャイズ展開を目指す。フランチャイズのパートナーは現地企業を想定する。提供するのは、日本式のカレースタイルで、カレーは日本の工場で生産したものを輸出する。ナンもメニューに入れられるよう調整している。

 インドは人口が13億人超と、内需主導の高成長が期待され、多くの日本企業が進出している。しかし、インド独特の商慣習や文化に苦戦する企業も多い。ある関係者は「インドはローカル企業と組まないと、攻略が難しい国。三井物産といえども、インドで外食の知見がある訳でもないのに、大丈夫なのか」と懸念する。さらにココイチが商社と組んで海外進出するのも初めてだ。新参者2社にとって、カレーの本場は辛口と甘口、どちらになるのか。

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