
7月1日のサービス開始後まもなく不正アクセス被害が多発したセブン&アイ・ホールディングスのスマホ決済「7pay(セブンペイ)」。同社は入金手続きと新規登録を停止し、5日には「セキュリティ対策プロジェクト」を設置したと発表した。同プロジェクトは不正アクセスを受けた原因や経路を特定するとともに、携帯電話のSMS(ショートメッセージ)を使った2段階の本人確認を導入するなど、脆弱だと批判を受けた不正アクセス対策を大幅に見直すという。
しかし、一度失った信用の回復は簡単ではなく、今後のセキュリティー強化についても不安視する声は多い。そんな中、SNSを中心に「セブン&アイは7月11日までに7payの機能再開を目指している」という臆測が広がっている。
セブン&アイは7月11日を「セブン-イレブンの日」と銘打ち、ここ数年はメーカーと共同で限定商品を開発・発売するなど、大規模な販促策を打ち出してきた。さらに今年の7月11日は、これまで全国の都道府県で唯一進出していなかった沖縄県に、直営店とフランチャイズ店舗を14店開店。全都道府県進出を達成する。これに合わせて、沖縄県にちなんだ商品を沖縄県を除く全国で期間限定発売すると発表している。
こうした重要なタイミングだからこそ「セブン&アイが無理やりにでもセキュリティー強化を急ぎ、7pay再開を7月11日に間に合わせようとするのではないか」という臆測が出てきたようだ。「知人の話」としてさも事実のように再開に触れている書き込みもある。
7月11日までに7payの一部機能を再開するのは事実なのか。セブン&アイの広報センターに問い合わせると、「『7月11日までに7pay再開』という噂はデマ」と否定した。
そもそも7payに関して、セブン&アイは以前から7月11日をそこまで重要視してはいないことがうかがえる。同社は7pay開始と同じ7月1日に、全国のセブンイレブンで国内3社(LINE Pay、PayPay、メルペイ)と海外2社(アリペイ、WeChat Pay)のスマホ決済を利用できるようにしたが、7月11日から21日まで展開する還元策「最大20%戻ってくる!キャンペーン」には、7payは当初から参加しない計画だった。
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スマホ決済各社が大胆なキャッシュバックキャンペーンで利用者を奪い合う中、「セブン-イレブンの日」にかこつけたとしても後発の7payが奪えるシェアは大きくないと見込まれる。キャンペーン合戦で消耗するよりは、セブン&アイの電子マネー「nanaco(ナナコ)」の会員、およそ6000万人をじわじわと7pay利用者に転換しようという戦略が透けて見えていた。
こうした状況で、拙速に7payを再開して既存のnanaco会員の信頼をさらに損ねることは、セブン&アイにとっては避けたい事態だろう。開始直後のつまずきにより、新規顧客の獲得は難しさを増した。既存の顧客に寄り添い、どこまで信用を回復できるかが、7payの生き残りのカギを握る。
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