
消費者庁は7月4日、光触媒を使用したマスクの販売会社4社に対して、景品表示法に違反する行為が認められたとして、再発防止などの措置命令を出した。
措置命令を受けたのは、アイリスオーヤマ、大正製薬、玉川衛材、DR.C医薬の4社。「花粉を水に変えるマスク」(DR.C医薬)、「光の力で分解するマスク」(アイリスオーヤマ)、「しっかり吸着 光で分解」(玉川衛材)、「光触媒で分解!」(大正製薬)といった表示が、実際よりも優良に見せるものだと指摘された。消費者庁は4社に根拠となる資料を求め、「合理的な根拠はない」と判断した。
4社のマスクの効能は微妙に異なるが、共通するのは「マスクに光触媒を含ませることによって、花粉由来のアレルギーの原因となる物質を水と二酸化炭素に分解する」というもの。有名芸能人を使った広告を打つなど、一時派手に宣伝していた商品もあった。だが、消費者や専門家からは効果に疑義を呈する声も上がっており、消費者庁も注視していたようだ。
措置命令を受けての反応は各社で割れた。
アイリスオーヤマは2018年8月に「光の力で分解するマスク」の販売を開始したが、措置命令が出る前の6月30日に終売した。今年に入り消費者庁からの指摘で改めて調査したところ、「効果は誤認だった」と分かり、終売を決めた。同社の協力メーカーが、光触媒を含むフィルターで検証したところ効果はあったが、マスクをつけてすぐに効果のあるものではなかった。「光の力で分解するマスク」は、終売まで累計約4万5000個(1個5枚入り)売れたが、「ヒット商品というわけではない」(同社)という。同社は「今回の措置を真摯に受けとめ、景品表示法に関する社内の勉強会を開催するなどして再発防止に努める」としている。
玉川衛材は「本製品の光触媒効果自体が否定されたわけではない」としながらも、消費者庁からの指摘は認め「今後においては、パッケージの文言の追加や修正を実施するなど、適切に対応する」としている。DR.C医薬も、玉川衛材同様、光触媒の効果そのものについては、「不織布を使った実験では、光触媒の技術を使うことで、短時間でアレルゲン量が低減した」と、否定していない。だが、「目立つキャッチフレーズをつけた」とは認めており、「来期の花粉シーズンに向けてより誤解のない表現で対応する」とした。
一方で、大正製薬は消費者庁の措置を強い口調で批判した。同社は4日付でリリースを出しており、「今回の措置命令の指摘事項は、当社が消費者庁に提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものではないと考えている」としている。法的措置も検討中だという。
「光触媒マスク」の効果については、消費者からも疑問の声が上がっていた。消費者の商品を選ぶ目も肥えている。誇張表現は消費者を逆に遠ざけてしまう可能性もある。
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