メルセデス・ベンツ日本は4日、EV(電気自動車)「EQC」を国内市場向けに発表した。多目的スポーツ車(SUV)の「GLC」をベースとしており、1回の充電で400km走行することができる。メルセデス・ベンツが本格導入する初のEVで、電動車に特化した同社のサブブランド「EQ」の最初の市販車となる。

メルセデス・ベンツのEV「EQC」。左はメルセデス・ベンツ日本上野金太郎社長兼CEO、右はブランド・アンバサダーの武 豊騎手
メルセデス・ベンツのEV「EQC」。左はメルセデス・ベンツ日本上野金太郎社長兼CEO、右はブランド・アンバサダーの武 豊騎手

 欧州連合(EU)では、21年に1km走行あたりのCO2(二酸化炭素)の排出量を15年に比べ3割ちかく低い95g以下とするなど、厳しい自動車の燃費規制がしかれ、欧州の自動車メーカーは電動車の開発を急ぐ。日本市場でも既に独フォルクスワーゲンや独BMWのEVが販売されているほか、英ジャガーのEV「I-PACE」が受注を開始。独アウディや独ポルシェなども来年にかけてEVを導入する見通しだ。

 日本でも先月、自動車メーカーに対する新たな燃費規制を経産省と国交省がまとめた。30年度までに、ガソリン1Lあたりの走行距離を20年度に比べて約3割改善することを求める。達成にはEVやPHVの普及が欠かせない。各社がEVの開発にアクセルを踏みはじめており、徐々に顔ぶれがそろうと予想される。昨年、輸入車ブランドの中で販売台数トップであったメルセデス・ベンツの「EQC」導入が、日本のEV普及に弾みをつけるのではという見方もある。

 ただ、そのために乗り越えなければならないのが消費者の心理的なカベだ。次世代自動車振興センターの調査では、EVやPHV(プラグインハイブリッド車)を持たない世帯のうち、「充電インフラ」に不安を持つ人が92.5%、「走行距離」に不安を持つ人が87.2%に及んだ。

 日本自動車工業会の市場動向調査によると、一般世帯のドライバーのうち月間走行距離が300km以下だとする人は約6割。EQCの航続距離は400kmで、「EVだからというより、普通の車だという気持ちで選んでもらいたい」(メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長)というように、航続距離は日常的な利用では問題ないレベルとなっている。

 それでもメルセデス・ベンツ日本はEQCのオーナーに対し、全国2万1000カ所以上の充電設備での1年間の無料充電や、自宅へ設置する普通充電器の無償提供、同社の他モデルを5年間で5回まで無料でレンタル可能とするなど、充電環境や長距離運転に関する周辺サービスの手厚さが目立った。上野社長は「EVにはお客さまの心のバリアがある。ディスアドバンテージをもたらさないように、(サービスで)払拭していこうという狙い」と述べた。EQCの価格は1080万円から。高級車ならではの至れり尽くせりのサービスで、ユーザーの心理的ハードルを取り除こうとしている。

 一般的なガソリン車などと比べ、車両価格が割高なEV。普及に向け、国内メーカーにとってはコストダウンにつながるバッテリー開発などに注目が集まる。しかし実際に消費者に届ける段階では、性能だけでなくEVへの不安を取り除くサービス提案も肝となりそうだ。

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