全2252文字

 日本で初めての「治療用アプリ」を2019年5月に厚生労働省に承認申請したベンチャーのキュア・アップ(東京・中央)の佐竹晃太社長が5日、都内で事業説明会を開催。第一生命保険や森トラストなどから22億円を調達し、引き続き複数の疾患に対する治療用アプリの開発を進めるとともに、米国や中国にも事業展開していく計画を発表した。

キュア・アップの佐竹晃太社長
 

 まず、医師が処方する治療用アプリとはいったいどういうものか。

 キュア・アップが開発したニコチン依存症治療用アプリはクラウドに置かれた自動診療システムで、患者が禁煙外来などに受診した際に、医師がシステムにアクセスして患者の情報を入力。患者はアプリをスマートフォンにダウンロードし、医療機関や薬局でパスコードと呼気中の一酸化炭素濃度を計測するIoTデバイスとを受け取る。このアプリに、患者が日々の状態や服薬状況などを入力すると、それに応じたアドバイスなどを自動的に表示する。例えば、「たばこを吸いたくなった」と入力すると、「なぜ吸いたくなったのか」と質問されたり、「つらいですよね」といった共感、さらに「ガムをかみましょう」といった提案が表示されたりといった具合だ。

 キュア・アップは2015年に慶応大学医学部呼吸器内科教室と共同でこのアプリの開発に着手。最終的な臨床試験では、572人の患者の約半分にこの治療用アプリを使ってもらい、残りの半分には一部の機能を省略したアプリを使ってもらうという比較試験を実施。約半年後の継続禁煙率で有効性を立証するデータが得られたとして承認申請を行った。「禁煙補助薬の国内臨床試験のデータと見比べても、そん色ない効果を示すことができた」と佐竹社長は胸を張る。

 治療用アプリはこのように、医師に受診した際だけでなく、日常生活の中で患者が使用することで、その行動や思考に変化を促すというものだ。医薬品でも医療機器でもない、第3の治療手段ともいえるこうした治療用アプリの開発が国内外で活発化している。

キュア・アップが開発したニコチン依存症治療用アプリ

 米国では2013年に米食品医薬品局(FDA)が審査のガイダンスを発表したことを背景に、数多くのベンチャーが開発に乗り出し、既に複数のアプリが承認されている。日本でも2014年の薬事法(現医薬品医療機器等法)改正により、アプリを医療機器として承認できるようになったことから、ベンチャー企業などが開発に着手。キュア・アップのニコチン依存症治療用アプリがその第1号として申請にこぎ着けたというわけだ。

 キュア・アップはこのニコチン依存症治療用アプリに続いて、自治医科大学循環器内科教室と連携して高血圧治療用アプリの開発を進めており、最終的な臨床試験の準備中。さらに、放置すると肝硬変から肝がんに進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)という疾患に対する治療用アプリを開発するべく、東京大学医学部付属病院消化器内科学教室と共同で臨床研究などを行っている。これらの開発はこれまでにベンチャーキャピタルなどから調達してきた約20億円の資金を用いて進めてきたが、今回、新たに22億円を調達した。うち19億円は、第一生命保険、森トラスト、コシダカホールディングス、インテージホールディングスという事業会社が引き受けた。

 今回調達した資金を用いて計画しているのは、パイプライン(開発段階にある製品群)の拡大とグローバル展開だ。パイプラインについては、現在手掛けている3製品以外に、2020年から2021年にかけて、新たに5製品の臨床試験を開始することを計画している。「対象疾患は明らかにできないが、治療用アプリが有効な生活習慣病や精神疾患、長期療養が必要な慢性疾患などが対象になる。製薬企業とパートナリングも検討しながら事業を進めたい」と佐竹社長は語る。