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インドの高速鉄道(写真:AFP/アフロ)

 国の運輸安全委員会は7月1日、インドから鉄道の事故調査に携わる研修生10人の受け入れを始めた。鉄道の保守方法などについて日本の鉄道事業者などから学ぶ国際協力機構(JICA)の「鉄道安全能力強化プロジェクト」の一環で、安全委が鉄道分野でこうした研修を国内で実施するのは今回が初めて。鉄道事業の海外展開が進む中、安全性向上を目指した事故調査手法の「輸出」も始まった。

 研修は12日までを予定。安全委が過去に公表した鉄道分野の調査報告書を基に、調査報告書の作り方や関係者への聴取方法のコツなどを伝える方針だ。

 インドでは2016年に100人以上が死亡する急行列車の脱線事故が起きるなど、鉄道の死亡事故が相次いで発生。再発防止のための取り組みの1つとして、安全委の国際協力が始まった。

 運輸系の事故防止を巡っては、航空は国際民間航空機関(ICAO)、船舶では国際海事機関(IMO)が存在し、事故調査についても手続きなどについても加盟各国での共有が図られている。しかし、鉄道分野にはこうした専門組織やルールがないのが現状だ。

 安全委の奥村文直・鉄道部会長によると、アジアでは、鉄道の事故調査機関を設けている国自体が多くはないという。またインドでは調査機関を設けて事故調査しているものの、死者が多数発生するような事故でなければ一般的に調査せず、さらに責任追及を避けるために、天災だから仕方ないと結論づける調査報告もあるという。

 日本の場合、安全委の調査は責任追及ではなく、再発防止を目的に置く。安全委は国土交通省や関係事業者に再発防止に向けた勧告や意見を出すことができ、国交相は勧告などを受けて鉄道各社に指導する。

 奥村部会長が初日の研修で日本の事故調査の方法や目的を説明すると、インド側から「報告書で刑罰を与えられないのか」「どのような事故を調査対象にしているのか」などの質問が相次いだ。

 インド以外からも事故調査を学びたいという要望が出てきている。19年1月には奥村部会長らがミャンマーを訪問して鉄道安全セミナーに参加したほか、今後はシンガポールへの支援も検討されている。

 国内の人口減少が進んでいく中、鉄道事業者は事業の海外展開を進める。国も2017年に鉄道分野の海外展開戦略を公表し、官民一体で日本の鉄道輸出を図る。安全性や定時性といった点が日本の強みだ。

 事故調査でアジアでの安全意識や安全技術が向上すれば、情報共有や意見交換を通じ、日本がこれまで気付いていなかった点も含めてより安全性向上につながる可能性もある。奥村部会長は「安全委や日本の事故調査の存在を各国にアピールし、ぜひ協力していきたい」としている。

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