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 日本政府が昨年、同性愛への迫害を理由にした難民認定をしていたことが明らかになった。認定された難民の出身国や性別などは公表されていないが、難民認定された人物は出身国では同性愛行為によって逮捕・収監された後、保釈中に出国した。出身国で同性愛行為の容疑で投獄された事例があることが、認定判断のポイントになったという。

 今回の認定は「厳しすぎる」とされる日本の難民認定制度にとって「前進」と評価できそうだが、そもそも日本の難民認定制度はどのようなものなのだろうか。

 日本の難民政策は1970年代後半、ベトナム、ラオス、カンボジアが社会主義体制に移行したことにより、新体制下での迫害を恐れて避難した「インドシナ難民」が急増したことで始まった。81年に難民条約に加入し、この条約で規定される難民の定義に基づいて、現在も認定を行っている。

輸送船に引かれて南シナ海を進む難民のはしけ(1975年)(写真:共同通信)

 外務省のホームページによると、その定義は以下のようなものだ。

  • 人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に,迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
  • 国籍国の外にいる者であること
  • その国籍国の保護を受けることができない,又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること

 冒頭の事例は「特定の社会的集団の構成員であること」を理由に迫害の恐れがあると認めた形だ。

 法務省出入国在留管理庁によると2018年の難民認定申請者数は1万493人。そのうち難民と認定されたのは42人だ。認定率にすると0.4%となる。この数字をもって、日本の難民認定は厳格すぎると指摘されることが多い。確かに一面では正しい指摘だが、この数字にはカラクリもある。

 法務省は10年3月、難民申請後6カ月から日本での就労を許可する形に難民認定制度の運用を変更した。本来は、認定審査が長期におよぶ申請者の生活を安定させることが目的だった。ところが、この制度変更を利用して、観光目的の「短期滞在」や「留学」、「技能実習」で日本に入国した外国人が就労を目的に難民申請を繰り返すケースが急増した。

 その結果、10年に1388人だった難民申請者数は17年には1万9629人にまで増えた。国籍別の申請者数を見てみると、フィリピン、ベトナム、スリランカ、インドネシア、ネパールとアジア諸国が続き、上位5カ国だけで総申請数の約70%を占めていた。一方、難民認定を受けたのはエジプト、シリア、アフガニスタンなどの出身者だった。各地の出入国在留管理局にとっては、不当な申請を処理する負担も問題になっていた。

 こうした「偽装難民」の増加を受け、法務省は2018年1月から運用を改めた。申請後2カ月以内に書面審査を実施し、明らかに難民に該当しない申請者などの就労を認めないこととした。この結果、2018年の申請者数は前年に比べ9136人減少。それでも、技能実習生や留学生の申請は約2200人と、申請数全体の2割を超える。

 技能や知識の習得による新興国の人材育成支援を目的として始まった外国人技能実習制度は、工場での劣悪な労働環境が報じられるなど、日本側が単純労働力の確保ために制度を利用していることが問題視されている。一方で、厳しすぎると言われる日本の難民認定の実情を見ると、一部の外国人にとっては技能実習制度による訪日は「出稼ぎ」程度の認識しかなく、就労を続けたいがために難民制度を乱用している事実も浮かび上がってくる。

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