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 書店チェーンの文教堂グループホールディングスは6月28日、私的整理の一種である事業再生ADRの利用を申請し、受理されたと発表した。理由については「ネット通販やデジタルコンテンツの普及により書籍の市場規模は縮小傾向が続いていたため」(文教堂)としている。

 同社は1898年に創業し、全国に161店(2018年8月時点)を展開するなど中規模の書店チェーンだ。2018年8月期の売上高は前年同期比8.5%減の273億円、営業利益は約5億円の赤字。同期末時点では債務超過の状態に陥っていた。

 これまでにも資本の強化策は打ち出してきた。10年には大日本印刷(DNP)を引受先とする第三者割当増資を実施し、その後、DNPの連結子会社となった。だがDNPが出版取次の日販に株式の一部を売却。いずれにしろ、文教堂の経営に関して抜本的な改善にはつながらなかったようだ。

写真はイメージです(写真:PIXTA)

 19年8月末までに債務超過が解消されなければ原則として文教堂は上場廃止となる。同社は20年8月末までに債務超過を解消する再生計画を策定し、ADR手続きで再生計画が成立した場合には1年間の猶予期間が認められ、上場が維持されるという。

 書籍流通は二極化が進んでいる。一方は、言うまでもなくネット販売。アマゾンを筆頭としたネット書店が圧倒的な品ぞろえとスマホやPCで購入できる利便性で支持を集めている。もう一方が、書籍だけでなく雑貨や衣類などと混成した売り場を設け、書籍を選んで買うだけではない、ネットではできない「体験」を楽しんでもらおうという「コト消費」型の大型書店だ。

 カルチュア・コンビニエンス・クラブが出店する、蔦屋書店を中核として複数の専門店が集まるライフスタイル提案型商業施設「T-SITE」や、台湾発で19年9月に日本橋に出店する「誠品生活日本橋」は後者の好例だろう。青森県八戸市の公営書店「八戸ブックセンター」は、図書館や八戸市などと連携し、八戸市を「本の街」にしようと、高校生や大人も楽しめるイベントを開催。「商業的な利益を求めておらず、あえて売れ筋の本は置いていない。来場者にはいい本に巡り合ってほしい」(同センター)とし、他県からの来場者も少なくない。泊まれる本屋と銘打った施設「BOOK AND BED TOKYO」は新宿や池袋、心斎橋などに店舗を広げている。

 「買う」に特化したネット書店と、「買う」以外の付加価値で戦う大型書店。この二極化のはざまで、郊外や地方都市に中規模のチェーン店を出すという文教堂のモデルは力を失っていった。欲しい本を買おうと思っても、書棚の制約から在庫が少なく、雑誌や話題の新刊書以外が手に入りにくい。選書や雑貨、あるいはイベントなどに力を入れようにも、集客力も店舗のスペースも人員も限られていて実現が難しい。成長期には出店スピードを上げるための武器になった「中規模」という強みが、経営環境の変化で弱みに転じてしまった。

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